『イエスの弟子達』 21 サウロの失策 "THE SCRIPTS OF CLEOPHAS" by Geraldine Cummins

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  • เผยแพร่เมื่อ 4 ก.ค. 2024
  • 『霊界通信 イエスの弟子達』 パウロ回心の前後
     G・カミンズ著 山本貞彰訳
     21 サウロの失策
     サウロと長老は、クリスチャンの頑固さに閉口(へいこう)していた。サウロを慕っているハナンは奴らが危険な反乱をたくらんでいることをローマ総督に吹き込もうではないかと言いだした。彼らは早速ローマ総督のところにおしかけ、クリスチャンたちは遠からずエルサレムに火をつけ、どさくさまぎれにローマの兵隊におそいかかり、ユダヤから追い出そうとしている、と言った。当時のローマ人は、特にユダヤの青年層の動きに注意を払っていたので、彼らの言うことに耳を傾けた。しかしクリスチャンとはかかわりたくなかったので、総督は代案を提示した。それはユダヤ人の中から評判の良い人を数人選び、彼らにクリスチャンを処理する権限を与えようとするものであった。
     そこでサウロとハナンは、彼らの中からクリスチャンを嫌っている者を数人選び、生殺与奪の権限を与えた。選考は投票によって行われた。更に総督から何度も念を押されたことは、使徒には絶対に手を出さないことであった。総督の親戚筋からも絶対に使徒には手だしをしないようクギをさされていた。その親戚筋とは、かねて使途ペテロが、死んだ娘を生き返らせたローマ人の父親であった。彼は任務を終えてローマへ帰る時に、総督に念を押してユダヤから帰って行った。ローマではなかなかの権限を持った人である。総督は、大祭司とサウロに対して、再三使徒には手出しをしないように勧告していた。使徒は群れの指導者であるから、彼らにムチを当てたり投獄などしたら、それこそ本当に暴動が起きるかもしれないと警告した。大祭司とサウロは、いやいやながらこの命令に服し、下っ端どもを相手にすることになった。
     専ら神殿内でキリストの説教をしている者たちを掴まえては、治安妨害罪ということで死刑を宣告した。しかしサウロの権限は、日ごとに増大していった。それと共に、クリスチャンが金持ちや商人に対して、彼らの財産を強奪する陰謀をたくらんでいるという噂が広まって行った。サウロは手あたり次第に噂の種をばらまいていったからである。彼は、会堂や家の中からクリスチャンを強引にしょっぴいて回った。多くのクリスチャンたちが無実の罪を着せられて殺されていった。クリスチャンを撲滅するのに熱中している時は、サウロにとって四人の亡霊から逃れられる時であった。サウロによって始められた教会への迫害はますます激しくなっていった。若い母親がイエス・キリストを信ずる告白をすれば、乳飲み子までも容赦なく牢獄にぶちこんだ。牢獄には、女子供が溢れるように詰め込まれたので、多くの弱い人々は牢獄の中で死んでいった。それでもクリスチャンたちは、死を恐れなかった。老いも若きも困難をいとわず、むしろムチ打たれることを光栄とし、飢えや渇きに喜びをあらわすという光景が見られた。これは実に不思議な事であった。祭司や長老たちが牢獄を訪れるたびに、彼らのイエス・キリストに対する立派な信仰心が読み取れるのであった。迫害者は途方に暮れた。投獄や死刑の宣告をもってしても、彼らの信仰心を打ち砕くことができなかったからである。その上牢獄にはこれ以上詰め込むスペースがなくなってしまった。そこで長老はサウロに言った。
    「おまえのやり方は失敗だ。依然として使途たちは教えを説き、信者たちは教えに忠実に従っているではないか」
     サウロはかえって居直り、更に強力な権限を与えて欲しいと要求した。大部分のクリスチャンは他の町に逃げ去り、そこからエルサレム在住のクリスチャンに金や食料を送っていた。
     ダマスコ(シリアの首都、ベイルートの東57マイルの地)には相当数のクリスチャンがいて、キリストの教えを熱心に伝えていたので、多くの人々を夢中にさせ、まるで、枯れ葉に火をつけたように広がって行った。この分では、間もなくイスラエルの神への信仰者は居なくなってしまうように見えた。それで大祭司と長老はサウロに公文書を発行し、ダマスコはもちろんのこと、ユダヤ全土においてクリスチャンを迫害する権限を与えることになった。
     サウロは公然と使途には手をだせないので、別な方法で十二使徒をやっつけるワナを工夫した。彼が雇い入れた数人の男にクリスチャンを装って彼らの中に潜り込ませ、使徒たちがやってくる集会の時と場所を探らせた。使徒たちの目下の働きは、教会内部に発生した新たな問題、即ち、苦しめられている同志を救い出すことであった。そのために相談や祈りの時を必要としていたのである。サウロはそこに目をつけ、多額な金で買収した者に集会の時刻を探らせた。その時こそ、使徒たちを殺すチャンスになるかもしれないと考えた。買収した若者たちを集め、ぶどう酒を振舞いながら、教会の奴らを刀で切り殺すようにそそのかした。この仲間にアゾルというリーダーがいて、大変気が短く、ぶどう酒がそれに拍車をかけたので、直ちに仲間を引き連れて十二使徒の集会所に向かった。サウロの下僕が彼らを案内した。
     真夜中になって、いよいよ復讐ができる時がやってきた。若者の気性を知り抜いていたサウロは、門の所で彼らに冷ややかに言った。これはとても危険な仕事であり、自分は血を流すようなことは好きではない、と伝えた。彼らはますます興奮し、刀を振り回しながらサウロに約束した。キリストとかなんかと言う極悪犯罪人と共謀者の首をひっさげてエルサレムにかえってくると息巻いた。
     若者の足音が消えてから、サウロの心は躍った。憎たらしい奴らが今晩死んで葬られると思うだけで体がぞくぞくしてくるのであった。なおも彼は空想に耽(ふけ)っていた。キリストの教会を全滅させれば、権力はおれのものになるのだ。それは何と痛快なことか、その途端、例の四人の若者の幻が彼の前に再び現れた。この若者はいつもと同じように彼の魂の救いのために祈っているのである。この祈りは彼にとって、物凄いちょう笑として聞こえてくるのである。彼は、大声で叫びながら空中を殴り始めた。まるで人影をたたき潰そうとしているかのようであった。しばらくして彼はひざまずき、今度こそイスラエルの神に、この計画が成功するように祈った。猛毒がユダヤ人全体をだめにするまえに、サソリの巣をねこそぎ粉砕してしまうことを願った。彼は立ち上がりながら快感を覚えた。十二使徒が今夜殺され、キリストの息がかかったものがすべて消えうせてしまうと思うと、たまらなく嬉しかった。サウロはこれでステパノにも勝てたし、夜も昼間も、のべつ亡霊に悩まされることもなくなると思った。その夜は月がこうこうと輝いていて、若者を照らしていた。彼らは十二使徒が集まっている秘密の場所に近付いた。
     使徒たちは一同に会し、聖霊の導きにより、教会の行く手を示してもらうことが必要であった。使徒は祈り続け、聖餐(ミサ)にあずかった。彼らはみんな手をつなぎ合い、肉体に聖霊が宿ることを祈り求めた。この夜は、殊にペテロ、ヤコブ、ヨハネに霊力が加えられ、事前に刀剣で武装した者たちがやって来て、彼らを皆殺しにする時間が迫っていることが予告されていた。
     アゾルと仲間十人の若者が入り口の戸をたたいた。何の返答もなかった。彼らは勝手に戸をあけ、中に押し入った。内部の深い静けさがアゾルとその仲間を圧倒した。若者たちは、まるで山にでも登る時のように歌をうたったり、大声で話し合っていたのであるが、余りにもただならぬ雰囲気に圧倒されてしまい、ただ黙ってお互いの顔を見詰めあっていた。じっとしているのももどかしく、若者たちは抜き身の刀をふりかざしながら部屋の中へ突入すると、突然、彼らの体がこわばってしまい、麻痺し、まるで神殿内に飾られた偶像のように棒立ちになってしまった。恐怖の目で十二使徒を見詰めると、彼らは手をしっかりとつなぎながら、テーブルを囲んで座っており、テーブルの真ん中には、聖餐用の杯(カリス)が置いてあった。部屋の中は薄暗く、霧のような異常な蒸気が杯から舞い上がっていた。その蒸気が、ゆっくりと侵入してきた若者の体を包みこんだと思うと、蛇が絡みついたように彼らの体を締め付け、ついに息が詰まってしまった。使徒たちは依然として身動きもせず、ひたすら聖霊の訪れを祈り求めていた。
     この事があってから、エルサレム中はこの話で持ちきりであった。ある者は、獅子の子ユダ (アブラハムの孫ヤコブの第四子で、ライオンのように強かったと言われていた・・・創世記四十九章参照 ⦅※1⦆) が現れて十二使徒を護ったのだと言い、ある者は、人間の目に見えない四匹の野獣が飛び出して十二使徒を護ったのだとか、様々なうわさがとびかった。この時、若者が本当に見たものは、彼らを縛りつけた不思議な蒸気と、聖霊にしっかりと護られた十二人の使徒たちであった。
     その後、若者たちの心はバラバラになっていった。彼らが這いずるように部屋から出てきた時の顔は、もはや人間ではなく、野獣のような顔付きであった。狂気が彼らを被い、死神に取り付かれたように一目散に町へ逃げていった。
     この出来事をアゾルは一部始終サウロに話して聞かせた。仲間もみんな手を引いてしまったことを付け加えた。サウロの打撃は大きかった。しばらくの間この若者が言っていることが信じられなかった。ついに彼は、教会の根を絶やすことに失敗したことを知って悶々とした。ようやくサウロは、彼らを護っている力がこの世のものではないことを悟った。彼は当時、誇り高い人間で、自分の知恵は長老たちよりも優れていると自負していた。使徒殺害計画の話はたちどころに広がって、様々な尾鰭がついた。しかし、ここで示されたものが真相であることを付け加えておく。
     サウロはエルサレムでの夢が破れ、長老からは責められ、商人からはあざけられ、ついにダマスコのエレアザル宛ての親書をたずさえて早々にエルサレムを立ち去った。エレアザルはクリスチャンをとても憎んでいる行政官で、サウロには大祭司からダマスコにいるクリスチャンを撲滅する総ての権限が与えられていた。
    ※1
               創世記四十九章のユダが登場するパート
    Judah, thee shall thy brethren praise:Thy hand shall be on the neck of thine enemies;Thy father’s sons shall bow down before thee.
    ユダよ、兄弟たちはあなたをほめる。あなたの手は敵のくびを押え、父の子らはあなたの前に身をかがめるであろう。
    Judah is a lion’s whelp;From the prey, my son, thou art gone up:He stooped down, he couched as a lion,And as a lioness; who shall rouse him up?
    ユダは、ししの子。わが子よ、あなたは獲物をもって上って来る。彼は雄じしのようにうずくまり、雌じしのように身を伏せる。だれがこれを起すことができよう。
    The sceptre shall not depart from Judah,Nor the ruler’s staff from between his feet,And unto him shall the obedience of the peoples be.
    つえはユダを離れず、立法者のつえはその足の間を離れることなく、シロの来る時までに及ぶであろう。もろもろの民は彼に従う。

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