第1434回「降魔」2024/12/10【毎日の管長日記と呼吸瞑想】| 臨済宗円覚寺派管長 横田南嶺老師

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  • เผยแพร่เมื่อ 25 ธ.ค. 2024
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    ■管長日記「降魔」
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    最後に一日のはじまりを整える、呼吸瞑想がございます。
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    降魔という言葉があります。
    円覚寺に入る橋があって、それは「降魔橋」というものです。
    降魔は『広辞苑』には、
    「〔仏〕悪魔を降伏すること。」と簡潔に説明されています。
    ついでに、「降魔の印」というのもあって、これは
    「悪魔降伏の印相。右手を右膝の前で大地に触れ、左手で衣をつかむもの」であります。
    「釈迦八相」には、
    「〔仏〕釈迦牟尼がこの世に現れて衆生に示した八種の相。
    降兜率・入胎・住胎・出胎・出家・成道・転法輪・入滅。
    または、住胎のかわりに、出家のあとに降魔を入れる。八相。八相成道。」
    と解説されています。
    お釈迦様のご生涯でもとても大切なのが、この「降魔」です。
    成道は、降魔によってなされたともいえます。
    岩波書店の『仏教辞典』で「降魔」について詳しく学んでみましょう。
    「悪魔を降伏させること。
    ブッダ(仏陀)の伝記の八大事件(八相成道)の一つ。
    ブッダが悟りを開かれた際に魔王(波旬)をはじめ多くの悪魔・魔女たちが脅迫・誘惑して成道の妨害を企てたが、このときブッダは右手で大地を指差して悪魔を退散させた。
    この姿から左手で衣をとり、右手を右膝の前で大地に触れる<降魔印>(触地印(そくじいん))の印相(いんぞう)ができている。」
    と解説されています。
    苦行では悟れぬと気がつかれたお釈迦様が、スジャーターのほどこしを受けて、更に草刈りの草を施されて、坐禅されたのでした。
    そのときにお釈迦様は、
    「我いま証を得られぬなれば、生きて此の座を立たぬであろう」
    と決意されたのでした。
    大法輪閣の『仏教辞典』には、次のように書かれています。
    「悪魔の宮殿は、このために震い動いて大きな恐惶(おそれ)を惹起こし、魔王は毒を呑んだように打悶えた。」
    とあります。
    悪魔にしてみれば、お釈迦様に悟りを開かれてはたいへんだと思ったのです。
    なんとかこれを邪魔しなければと思ったのでした。
    まさに修行の邪魔をするので「魔」なのであります。
    まず悪魔が取った方法は、魔女を遣わすことでした。
    「そして三人の魔女を遣わして太子の心を乱そうと企み、薄衣の羽衣かろく、瓔珞の花美しく着飾った妖艶な魔女等を太子に近づかしめて、あらゆる媚の限りを尽くして、優しく舞い麗しく歌わしめた。
    春は来ぬ、春は来ぬ、日のひかり暖かに、若芽萌え出でぬ。
    好き君よ、いかなれば、若き楽を捨てて、遠きさとりを求め給う。
    美しの、われらを見ずや、浮世をはなれし、仙者さえも、愛染の心、起こせしものを。」
    とお釈迦様に三人の魔女が近づいて誘惑したのです。
    しかし、お釈迦様は、そんなことでひるむわけはありません。
    「太子は、彼等に語り給うた。
    「汝等は善き果報によって、いま天身を得ているが、やがて無常の老死に襲われよう。
    形は妖かであるが心は端しくない。
    それは美しく彩画した瓶に、臭い毒を盛ったようなものである。
    欲は身を亡す本、死して悪道に堕つる因である」。
    この語によって、忽ち三人の美しさは失われ、浅ましい老婆の姿と化った。」
    というのです。
    誘惑にも微動だにしないお釈迦様のお姿が彷彿とします。
    しかし、悪魔はそれくらいであきらめるわけではありません。
    「魔王は大いに怒り、直ちに一億八千の鬼神を集め、弩を放ち剣戟(けんげき)を閃かして、畢波羅樹の下へと押しよせた。
    天地は暗く雷鳴は凄じい。
    師子や熊、牛や馬の首をつけたもの、人の頭に蛇の身をつけたものなど、すべての、異形異類の姿をした悪鬼夜叉等が、牙を噛み爪を光らし、毒の火をはき鉾の雨を降らして太子に迫った。
    ここにこの世の教主と大魔王との間に、大戦闘は開始せられた。」
    と書かれています。
    実にいろんな姿をした悪魔が襲ってきたのです。
    そのすさまじい様子は、
    「空には一千の星がながれて、黒雲うずまき、 大地大海は颶風(ぐふう)にあおられて、葡萄の花房のように震う。
    大洋は海嘯(つなみ)を起こし、河水は逆立って、千年の古木を繁らせた山山を崩し、振蕩の響、咆哮する声、げにすさまじい。
    世は挙げて黒い帳に覆われ、陽はその光を失って、空には異形の群が充ち満ちた。」
    と説かれています。
    「魔王が百千の大軍を率いて四方から太子をめがけて殺到すると、今まで太子を囲繞いて讚歎の声を放っていた神神も、恐れをなして逃げ走る。
    今は太子を助けるものとては、一人もいない。」
    はじめは神々がお釈迦様の修行を応援していたのですが、この恐ろしい悪魔の軍勢にはひるんでしまったのでした。
    「しかし太子は、「嘗て長い間に修めた十波羅蜜こそ、わが力ある軍勢であり、身をまもる宝刀、堅固なる楯である、この十波羅蜜の善行を揚げて、悪魔の軍を粉砕しよう」と、毫(すこ)しも動じ給うことはない。」
    といって敢然と立ち向かわれました。
    十波羅蜜というのは、六波羅蜜に方便・願・力・智の四つを加えたものです。
    「悪魔が風神を誘って狂風を起こしても、太子の衣は端だに動かず、雨神を駆って豪雨を降らしても、露だに太子を濡らさない。
    石の雨、剣の雨、火の雨を注いでも、それらは皆、華鬘と化り、香粉と化って、四辺に散らばるのみである。
    魔王が放つ暗黒も、太子に近づけば日の輝となり、投げられた武器も華の天蓋となる。
    今はいかなるものも、太子を害のうとは出来ない。
    魔王は真先に進んで叫んだ。
    「出家よ、樹の下に坐って何を求めるか、速かに去れ、汝はその金剛座に値するものでない」。
    しかし太子は厳然として「天地に覆われたこの世界に於て、この座に値するものはただ我一人である、
    遠き古えからの宿世の善根に飾られたものでなければ、この座を占むべきものでない、地の神よ、速やかに出でて証明せよ」と、大地を指し給うと、忽ち座下の大地を開いて地の神があらわれた。
    その轟然たる響に魔王の心は破れ、怖れ戦いて眷属をも顧みず、四方に逃げ失せた。」
    というのであります。
    しかし、更に「程経て悪魔は更に顕れ、手をかえ、甘言もて太子を誘おうとする。
    痩せ細るおんみの、顔の色の悪さよ。げに死は近し。
    おんみには、死せるぞ多く、生けるや少なし。
    生きよ、生くるこそ善けれ。生きて、善きことをなせ。
    清き行して、火に事うれば功徳多きに、いかなればかく、徒らに励むや。
    道行き難く、はた成し難し。」
    と修行を妨げようとします。
    しかし「太子は毅然として、悪魔を叱咤し給うた」のです。
    そのときの言葉が、
    「悪魔よ、放逸の奴隷よ、いかなれば来たれる。
    功徳、我に要なし。
    信仰と精進と、智慧をばもちて、道にはげめるわれに、如何なれば、生きよとすすむるや。
    流るる河も、熱風に乾くを、勤めつ励む、我が血のいかで、枯れざらん。
    血は枯れ、あぶら失せ、肉落ちて、心愈静まる。
    正念と智慧と明らかに、禅定いよいよ固し。
    われ嘗て、五欲の楽の極みをつくし、今や、その欲に望なし、この清浄の人をみよ。」
    というのです。
    それから更に軍勢は襲ってくるのですが、敢然と斥けられました。
    「悪魔は戦に利のないのを見て、悄然として悲しんだ。
    われ七歳、世尊を逐えど、正念に在(いま)せる、さとりの人の隙を得ず。
    柔らかき、肉に似たる石あり、鳥集まりて、甘き味を得んとすれども、その味を得ずして、鳥去る。
    我等も、石を啄む鳥の如し。
    悪魔は悲しみに敗れて、すごすごと消え失せた。」
    とついに悪魔も去ったのでした。
    かくして降魔が成し遂げられ、悟りを開かれるようになるのです。
    魔との戦いが成道につながるのであります。
     
     
    横田南嶺
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