「ブラックスワン」14月並みの国から果ての国、また月並みの国へ

ブラックスワン 第14章 月並みの国から果ての国、また月並みの国へ
ブラックスワン第14章では、「月並みの国」と「果ての国」という二つの概念が中心的に取り上げられています。「月並みの国」は安定した領域を持つのに対し、「果ての国」は予測不可能な出来事や極端な現象が頻繁に発生する領域として描かれています。この章では、「果ての国」がどのように形成され、その領域がどのように広がっているか、その影響と課題について考察されています。
果ての国の領域が広がっている事例として、現代の経済や文化の変化が挙げられます。例えば、芸能界やスポーツ界においては、一部の人々が極端な成功を収める状況が典型的です。これには「マタイ効果」が関与しており、一度成功を収めるとさらなる成功が呼び込まれ、富や影響力が一極集中します。運がその成功に大きく影響を及ぼしていることも指摘されています。この現象は、学術論文の引用数や都市の規模、さらには企業の存続期間など、さまざまな分野に共通して見られるものです。
さらに、資本主義の中では、大企業であってもその存続が保証されていないことが果ての国の特徴を物語っています。例えば、1957年にアメリカで大企業として認定された500社のうち、1990年代まで存続したのは74社に過ぎません。これにより、企業の成功や存続も運に左右されやすいことが示されています。一方で、オンラインショッピングやグーグルのようなプラットフォームの登場により、「ロングテール現象」が広がっています。これにより、ニッチな商品やサービスが新たな収益源となり、多様性のある市場が形成されると同時に、果ての国の不確実性が拡大しています。
果ての国の拡大は、金融危機のようなリスクを高める要因ともなっています。銀行間の集中化やグローバル化が進むことで、金融危機が一度発生するとその影響は甚大になり、多くの人々が被害を受ける結果となります。例えば、2008年のリーマンショックは、グローバルな金融システムのもろさを露呈させた事例として挙げられます。このような極端な現象は、果ての国の領域が広がっていることを象徴しています。
結論として、果ての国の領域が拡大する中で、集中化やグローバル化が進み、不平等やリスクが高まる現象が見られます。これに対し、中央集権化や社会主義的な解決策が試みられたものの、必ずしも成功していないことも議論されています。この課題への具体的な対策については本書の段階では完全には提示されていませんが、以降の章でさらに深く掘り下げられることが期待されています。