第1423回「無文老師の『般若心経』を読む」2024/11/29【毎日の管長日記と呼吸瞑想】| 臨済宗円覚寺派管長 横田南嶺老師

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  • เผยแพร่เมื่อ 1 ธ.ค. 2024
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    ■管長日記「無文老師の『般若心経』を読む」
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    最後に一日のはじまりを整える、呼吸瞑想がございます。
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    禅文化研究所の所長に就任して始めたことが、TH-camでありました。
    毎月、墨蹟の紹介と書籍の紹介をしてきました。
    もう一年になります。
    墨蹟紹介は、禅文化研究所所蔵の墨蹟を取り上げて、そこに書かれている言葉の意味内容と、その書画を書いた人物について話をしています。
    最近では、円覚寺の誠拙周樗禅師の「思無邪」という一幅を紹介しています。
    書籍紹介もずっと続けてきましたが、今月から新たに、「山田無文老師の『般若心経』を読む」を始めました。
    これは禅文化研究所から出版されている山田無文老師の『般若心経』という本をテキストにして、般若心経を学んでゆこうという企画であります。
    無文老師が説かれた『般若心経』は、禅文化研究所の書籍の中でもとても人気のあるものです。
    般若心経を無文老師が、どのように説かれているのか、皆さんと一緒に学んでいこうと思って始めました。
    般若心経について、無文老師がどのように解説されているか、一句ごとに般若心経の本文と、無文老師の解説を示して、それに対して私が少し言葉を加えるというものです。
    既に第一回が公開されていますので、関心のある方はご覧ください。
    第一回では、経題の『摩訶般若波羅蜜多心経』というところを読みました。
    まずは「摩訶」についてです。
    「摩訶」について、無文老師は次のように解説されています。
    「摩訶には大、多、勝の三義有り」、
    これには大、多、勝の三つの意味があるといわれております。
    摩訶般若は、普通、大般若と訳しておりますが、摩訶には「大」という意味だけではなく、
    「多―非常に数が多い」
    「勝―すぐれている」という意味もあるのです。
    ですから大般若と訳してしまえば、「多」と「勝」の意味が落ちてしまうから、摩訶というのであります。
    「摩訶には大、多、勝の三義有り」。
    摩訶は、ただ大きいだけではなく、その中にはいろいろな複雑な内容があり、しかも、その内容が非常にすぐれておる。それが摩訶であります。」
    という解説です。
    これはもうこの通りで、これ以上なにも付け足すこともないものです。
    次が「般若」です。
    「般若」について、無文老師の解説を引用します。
    「その智慧は分別の知恵ではなく、相対的な知恵ではなくて、絶対的な智慧、空のわかる智慧、無のわかる智慧である。
    私どもの分別の出てこない前の、生まれたままの意識の本体、アともウとも意識の出てこない先の、ちょうど白紙のような、池の上に波の立たぬ静けさのような、 そういった人間の根本智、分別の出てこない先の智慧。
    それが般若の智慧であります。」
    とあります。
    ここに根本智という言葉がでています。
    岩波書店の『仏教辞典』に「無分別」の解説として、
    「分別から離れていること。
    主体と客体を区別し対象を言葉や概念によって分析的に把握しようとしないこと。
    この無分別による智慧を<無分別智>あるいは<根本智>と呼び、根本智に基づいた上で対象のさまざまなあり方をとらわれなしに知る智慧を<後得智>と呼ぶ。」
    と説かれています。
    無分別の智慧が、根本智であり、般若の智慧であります。
    「波羅蜜多」について、無文老師は、
    「波羅蜜多とは、翻訳すると到彼岸、向こうの岸に行く、理想の国に行くということであります。
    こちらは暑くて仕方がないが、向こうの岸に渡ったら涼しい国がありはせんか。
    こちらでは年中戦争ばかりしておるが、あちらの岸に行ったならば戦争のない国がありはせんか。
    こちらは泥棒がおり、詐欺があり、火事があったり、いやなことばかりだが、向こうの岸に渡ったならば、そういうことのない平和な国がありはせんか。
    こちらの国では明けても暮れても税金ばかりとられておるが、向こうの国にいったなら税金のない国がありはせんか。
    このように、向こうの岸はひとつのあこがれの世界であります。
    こういう般若の智慧によって、お互いのこの苦しい暮しにくい現実の世界を彼岸にしていく。
    現実がそのまま彼岸だと悟りを開いていく。
    彼岸というものは河の向こうにあるのではなくして、実はお互いの脚もとが彼岸であった。
    向こう側から見るならば、こちら側が彼岸である。
    お互いの現実をこのままにしておいても、そこに立派な悟りを開くならば、ここが立派な彼岸になれる。そうわかることが「般若波羅蜜多」ということであります。」
    と説かれています。
    波羅蜜多は、完成とも訳されますが、到彼岸とも言います。
    無文老師は「到彼岸」ということで説いてくださっています。
    「心経」については、
    「心経とありますが、この心にも解釈が三通りあります。
    心というのは肝心かなめということ、大切なということだという説。
    心とは心性、 人間の心、精神をいうのだという解釈。
    心とは精神力、神力、人間離れをした非常に強い精神力だという説。
    こういう三通りに解釈されておりますが、普通は肝心かなめの、という意味に解釈してよいと思います。
    そういたしますと、摩訶般若波羅蜜多心経とは「大きな智慧の彼岸に到達する肝心な経典」ということになります。
    なにぶん二百七十二文字という短い経典でありますが、その中に仏教のもっとも肝心な真理が盛られておると思うのであります。」
    と説かれています。
    このように簡潔にわかりやすく説いてくださっています。
    TH-camですので、毎回十分少々で学べるようにしています。
    研究所の方が上手に編集してくれていて、テロップの見やすくなっています。
    十一月二十四日の毎日新聞に掲載された海原純子先生の「新・心のサプリ」には、「分断という危機」という題であります。
    アメリカでの黒人差別の問題から、我が国での最近に話題に触れておられます。
    「相手の発言を許せないと感じ、相手を否定し、そうした発言をよしとする人を憎み否定して分断が起きる。」と海原先生は書いてくださっています。
    般若の智慧は、分別しないのです。
    分断の危機が説かれる今こそ、般若の智慧を学ぶべきではないかと思っています。
     
     
    横田南嶺
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