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No6ラジカセ(娘1)あんた何でついてくるのって言ったら、 お前が一人じゃ退屈だろうと思ったからさ、だって。 私言ってやったわ。 あなたといる方が一人でいるより退屈よって。 さあ、おしゃべりはこのぐらいで 行きましょうか。(娘2) そうしましょう。(ア) 二人とももう帰るの?(娘2) 私たち帰るわ。補習なの。(娘1) また来るわ。(娘3) 明日先生が男の子達を連れて 見舞いに来ると言ってたわ。 さようなら。(ア) さようなら。ガ みんな、まだ騒いでいる。 音楽は大音響だし 学生たちは踊りに夢中だ。 どうした、退屈したのか?ア なんで早く帰って来たの?ガ ああ俺か? お前さんの話し相手になろうと思って。ア お母さんは?まだいるの?ガ いるよ。 俺おばさんがまだいられるようにと思って。 ほら、聞こえるだろ? これでエレキ・ギターや点滅ライトがあったら いいのに。ア 踊ってこなかったの?ガ ああ、酔っ払いが何人か ふらふらしていて 俺に絡んできたんだ。 だから、俺やっつけてやったよ。 その上ダグワをまた馬鹿にしたんだ。 あいつらに比べたらダグワは技師だよ。 何でも作れるんだ。 今度はテレビを映すって張り切ってる。 俺は弱い者を馬鹿にする奴等は 我慢が出来ない。 徹底的にやっつけてやった。 ざまあみろ。ア ほかの面白いことない?ガ 面白くないのか。ア いえ、他の話は?いつもけんかの話ばかりじゃない。ガ ほかに何に話すんだ。何を。ア 何だっていいわ。ガ 俺が小さいころどんな子だったと思う?ア そうね、わんぱくだったと思うわ。ガ おとなしい子供なんでいないさ。ア そうして?ガ 子供だからさ。 俺はおとなしい子だと言われていたんだ。 小さい時競馬に出る馬が 繋いであるのを放してやったんだ。 草が食べられなくて、かわいそうと思ってさ。 そしたら次の朝探すのにひと騒動さ。ア それからどうしたの?ガ どうって。 草をいっぱい食べた馬が競馬に出られるかい。 太った人間が競走に出るようなもんさ。 テレビ 緊張しているところを腕をつかまれ引っぱられ、 バランスを崩して手と足で身体を支える体勢になっています。 手を地面について持ちこたえました。 ツェレントクトホ横綱は、 相手の足を取りにいこうとしているようです。 取りました。決まりました。 相手を油断させたところで、 何年も前に出していたこの技を また出したのです。たいしたものです。 勤労協会所属、モンゴル人民共和国の 「衆の記憶となる、海の広さの、神聖なる横綱」 ツェレントクトホ、決勝進出。 モンゴル・ピオネール児童会館所属、 ツェレンフーが勝ち、アルタンホヤグに土がつきました。 少年の部、64人の力士の中から、 モンゴル・ピオネール児童会館所属、 ツェレンフーが優勝、 モンゴル・ピオネール児童会館所属、 アルタンホヤグが準優勝しました。ひげ ああ、お前テレビを見せてやってるんだってな。 湖の底を見せてやるよ。ガ おいお前ら、何するんだ。 おいやめろよ。ひげ お前いい奴らしいが、 いかんせん、その口がいけない。 ちょっと思い知ってもらうぜ。ガ やめろ。放すんだ。(バダルチ おい、そいつに怪我させるんじゃないぞ。 そうだ。) お前何見てる。 行くぞ。プルブドルジ 奴の様子はどうだ?ひげ いや、じたばたやっている。バ ほっておけ。ダグワ これでよし。ガ これどうするんだ?ダ 座ってみろ。 行くぞ。 ああ、抜けて。 あとは座席と背もたれをつけるだけだ。男 倉庫の屋根が抜けて大事(おおごと)になっているぞ。 すぐ来い。急ぐんだ。ダ 行くよ。ダ いいかい。ガ アリョナーのために作ってもらった。 出入りが楽になる。 倉庫の屋根が落ちて 小麦粉が水浸しになるところだった。ダ ガラー、ほら乾いたシャツ。ガ いいよ。部屋に戻って 着替えるから。ダ 嬉しいでしょ。 こんないい車椅子作ってもらって。ガ おはよう。ア ええ。ガ どんな具合だ?ア とってもいい、快適だわ。ガ 掃除の必要ないよ。 疲れるだけだ。ア 大丈夫よ。ガ 俺、明日きれいな景色を見せてやるからな。 その車椅子ならどこだって行けるさ。 俺のダグワは、まったく器用な奴だ。 あっという間に作ってくれたんだから。
No7ガ さあ、どうだ?ア きれい、本当に美しいわ。ガ こりゃなんてかわいい子だ。ア うちのクラスにナランゲレルって女の子がいたの。 彼女、子供を産んだそうよ。ガ そう。ア チムゲーって言う子は最近結婚したんだって。 眠っちゃったのね。ガ いいや。ア 私の話退屈なの?ガ そんなこと。ア 私、いつも人のお荷物になってるわ。ガ アリョナー、なんてこと言うんだ。 そんな風に考えちゃだめだ。 沈むな。落ち込むんじゃない。 きっと治る、俺には分かるんだ。 自分が必ず治るといつも思ってなきゃ。 信じることが大切なんだ、 アリョナー。 立派な夫を持って、 子供を産むんだ。 子供をたくさんな。 たくさん子供を作るんだ。ア 本当。子供が多いといいわよね。ガ 子供は可愛いもんだよ。ア あなた、子供のこと思い出す?ガ どうして知ってるんだ。ア あの鏡、何でも映すのよ。ガ 鏡って?ア ドアに打ち付けてくれた鏡よ。ガ 俺、どうしてか、ニャムスレンが 子供を連れて戻ってくると 信じているんだ。ア そしたら、うれしい?ガ もちろんさ。うれしいよ。ア 子供を連れてきたら。 私が見てあげるわ。いいでしょ。ガ 妻が可愛そうだ。 どうした。 具合が悪いのか? どれ、セーター着るんだ。ア いいえ。 ガ これはセルチマーおばさんがあなたにって。ダ こんなに気を遣って。 お食べ。ア ええ。ガ この乳は少しだけど、 うちの両親からアリョナーにって。ア ありがとう。ガ この靴はあなたに。 うちのお袋が乳搾りにはいてたのさ。 気にしないでいいよ。 湧き水に行く時に履いてけば。ダ 重いんじゃないかしら。ガ 俺、馬を連れてきたんだ。 馬に乗って行けばいいさ。 ほら。ダ あら本当。ガ これはお前さんに持ってきた。 足が暖かいぞ。ア 私そんなの履かないわ。 みっともない。ガ そうか、俺、部屋に戻るよ。ダ 足が暖かいだろうって持ってきてくれたのよ。 気を悪くしたじゃない。ガ この敷居を取ったら出入りが楽になるぞ。ア お母さん。車椅子の通り道を作ってくれてるの。ガ アリョナーの通り道を。ダ モンゴル人なのに何ってことを。 敷居は切るどころか踏むのもいけないのに。 すぐにやめなさい。ガ こりゃ、失敗だった。 待ってな。よいっしょ。ア なんて奇麗なんでしょう。 波のある湖は恐いわ。ガ 波は素晴らしいよ。 水面に溜まったゴミを 浜辺に打ち上げてくれるんだから。ア ガラーさん、あのおばあさん いつも岸のゴミを拾って歩いているわ。ガ ああ、あれか。 「海の母」。 永遠の命を持つって話だ。 うちの親父の若いころも あのばあさんがいたって言っている。 うちの者たちはすこし大袈裟なんだ。ア なぜ大袈裟なの。ガ 人間に永遠の命なんてあるもんか。ア あるわよ。あるわ。ガ ええ?ア 人生の素晴らしい愛が 永遠じゃないって言うの。ガ 分からない。ああ、そうかもな。ア 私はそう信じているの。 あなたも信じて。 そう信じないとぞっとするもの。ガ 主任、お呼びですか?主任 そうだ、そこに座れ。 君の出した不満について 特に人に命じて調べさせてみた。 だがそのような 事実はないと言うことだ。ガ 何、 そんな事実がないだって?主任 そうだ。そういう事実はないそうだ。 君も若い。 不満があってもいい。 批判もいい。 だが物事に軽率であってはいかん。 分かったか?ガ そしたら俺は、そしたら、 事実無根のことを言ったということか? このことはみんなが知っている。 面倒がいやだから 言わないだけなんだ。主任 お前のほかに同じ不満を言うものはいない。 聞けば、君は何かと言えば人を訴える人間だそうだ。 こんな根拠のない讒言は 集団の団結に悪い影響を与える。 今回は 見逃してやろう。 またこんなことがあったら、 今日のようにはいかないぞ。 分かったか? 分かったなら、仕事に戻れ。ガ 分からない。主任 何。分からないだと。 人を誣告したら罪になるのは 知ってるだろう。ガ あんたを誠実な人間だと思ってたのに。主任 さあさ、出ろ。
No3ダ さあ、湧き水飲んで。 マッサージするわ。 二人で外に出てみましょう。そうしない? ここの景色を見たら心が晴れるだろうって わざわざ遠くからお前を担いできた 母さんを思って。 天気のいい日に湖の水を見たら どんなに素晴らしいことか。 二人で外に出ましょう。ア 私、外に出ないって言ってるでしょ。ダ お前がこんな風に黙ってばかりいたら 母さん、身の置き場所がないんだよ。ア お母さん、何か仕事したら。 ガラーさん、何か見つかるって言っていたし。 私たち長い間いるんですもの、 何だっていいじゃない。 そうでしょ、お母さん。そうしなさいよ。ダ 本当はそうしたいんだけど、 お前を一人にはしとけないよ。ア 食事の用意だけしてくれればいいのよ。 私寝ているから。ダ そう、じゃガラーさんに聞いてみようかねえ?ア そうしなさいよ。ダ どれ。ア いやよ、赤ちゃんみたい。ア お母さん、近くに保育園があるわ。ダ どうして?ア 10時ごろ、子供たちが歌を歌ってたもの。ダ そうよ。近くに保育園があるの。 子供たちが外で、遊んでいるのが見えるよ。ア あー。ダ そうよ、二人で外に出ましょう。 そうしない?母さんの頼みよ。ラジオ それぞれの単位で働く人間の行動は 最終的な生産性に直接、 目に見える影響を与えるものである。 このことを個人そして勤労者集団のそれぞれが 特に注意をする必要がある。 このことから個人に集団の及ぼす影響、 個人が集団に対して見本となることの 問題が生じてくるのである。 集団の中での人間形成の過程に その集団の成員それぞれの 知識、教養、文化水準、修練度が 大きく作用するのである。バダルチ お茶にしないか。バトムンフ どれ、注いでくれ。若者 そこに注いだのがあるだろう。若者2 なんて熱いんだ。若者3 じゃ、自分で注ぐんだな。バ おい、ひとの自転車をいじるんじゃない。 やめろ。若者4 こんなおんぼろがそんなに大事か?若者1 おい、おい、こっちにも。バ さあ、ガラー。 魚を捕るといって一日中 ボートの上で寝ているのと比べて、 どうだ?えー。ダグワ よいっしょ。若者2 じゃ、運んでけ。ガラー おい、ダグワ、ちょっと休め。ダ いいよ。バ 勝手にやらせておけ。ひげ あいつ少しでも多く稼いで テレビを買うつもりさ。ガ そう思って何が悪いんだ。 あいつもお前と同じ人間だぞ。ひげ へっ。バ おい、お前。 「口は禍の元」ということわざを きっとお前も聞いたことがあるだろう。 お前は言い争いばかりして 行き所のなくなった人間だ。 口を慎まないと、しまいには あのダグワのように 吃りになってしまうかも知れないぞ。 ははは。プルブドルジ おい、みんな。 あいつの手綱を今からきつく 締め上げておかないと駄目だぞ。 手のつけられない奴だからな。ド おーい、ガラー。こっちこい。ガ ああ。ド すわれ。 みんな、同じ休むにしても 役に立つ休み方と言うものがある。 暇さえあれば互いをけなしあっている。 こんな風な休み方なら、しない方がいい。 いいか、みんな。 集団の中での人間形成の過程に その集団の成員それぞれの 知識、教養、文化水準、修練度が 大きく作用する。 なのに、うちではこのことを 省みない行動が多く見られる。 いいか、みんな。どうしたらいい? 少しでも暇があったら お互いを教育しあうんだ。 教養のある者はない者を、 経験のある者はない者を 助けなくてはいかん。 分かったか?みんな 分かりました。ド じゃ、みんな仕事を始めるんだ。 時間だ。みんな はい。ガ あんなきれいな娘が寝たっきりとはな。 魔法が出来たら治してやれるのに。 人間は心から治るというのは本当かな? そうなら、あのダグワの吃りも治してやりたい。 あの鏡、まぶしいぞ。
No8ア どうかしたの?ガ 大丈夫さ。ちょっと疲れただけさ。 一日何してた。ア うちにいたわ。ガ 構うな。自分に注げ。 俺、朝お茶飲んだから。ア ガラーさん。ガ 何だ?ア ちょっと聞いていい?ガ いいよ。ア この前殴られたの?ガ 誰がそんなこと。ア それで着ていたシャツの袖が 破れて、ボタンが飛んでいたんでしょう。ガ 誰に殴られたって?ア 何も隠すことないわ。 殴られたって言うのが恥ずかしいの? どうしたんだろうって、 すごく心配したのよ。 あの人たち本当に恐い人たちだわ。ガ え、ここに来たのか?ア 鏡に映ったのよ。ガ バトムンフ、こっち来い。 ありがと。あの自転車の代金だ。バトムンフ 要らないよ。ガ 遠慮するな。 今受け取らないと、 使っちまうぞ。ほら。バ 俺はそんなに乗らなかったから。 でもお前、いいものを作ったよ。 あの娘の役に立った。ガ 受け取れ。 かみさんにやれ。 怒っているだろう。 おかしいな。ひげ おや、ガラー。 俺を突き落とす気か? いや、冗談さ。 お前が仕事サボって 山に散歩させているのは どこのお姫様だ?ガ 関係ないだろ。ひげ 言っとくが、ドルジバトさんがな、、、ドルジバト おーい、ガラー、 俺の部屋にちょっと来るんだ。ガ ええ。ひげ 休暇を取るんだ。 おれたち20トゥグルクずつ出しあって ヤギの丸焼きをするつもりだ。 お前も20トゥグルク出せ。ガ 残念だが、20トゥグルク出せないな。ひげ はあ、こいつら全く付き合いが悪いな。 ガ 入ってもいい?ドルジバト ああ、入れ。すわれ。 給料もらったか?不満はないだろう。 おや、お前まだ文句があるのか? 文句を言うから、100トゥグルク 上乗せしてやったんじゃないか。 この先黙って仕事をしていれば もっと考えてやる。 さあ、行け。ガ あんた、俺の何が欲しいんだ。 何が。ええ?ド うるさいぞ。 ラジオを聞いているんだ。 出て行け。ガ ああ、そうかい。 見てろよ。ド おい、おい、お前。ガ 俺の良心を金で買おうと言うんだな。ド おい、お前、何するだ。 みんな、こいつを何とかしろ。 誰かいたら来てくれ。 おーい、みんな。 ガラーに殺される。ガラーに殺される。ガ 二人とも葬式に出たように、 何で下ばかり向いている。 俺、何か間違ったことしたか?バトムンフ 警察に出頭だなんて、 笑い事じゃないぞ。ガ 何が恐い? 俺は事実を言ったんだ。ダ ガラー、人様に手をあげるというのは よっぽどのことだぞ。 正直に生きてさえすれば何とかなる。 俺たち、調査してくれって 上の方に手紙を送ったんだ。ガ おまえら、くだらないことを。 男らしく決着をつけたらどうだ。 もういい、帰れ。バ ああ、帰るよ。ア あれ見て。ダ 何?ア ガラーさんがボートに乗っているわ。ダ そうだね。ア どこ行こうとしてるのかしら?ダ 本当。 「同志ガルバドラフは、仕事仲間を信頼せず、 欠点を諭そうとした人間を攻撃し、 国家の財産を破損し、 規律違反を繰り返したことから、我々は 彼を我が集団にふさわしくない人間と判断した。 よって同志ガルバトラフを解雇することとする。」ア 百。 海の母、 海の母。永遠の命を持つって本当かしら。
No5ガ おや、いいことだ。 始めからこうして外に出なきゃいけなかったんだ。 ほら、むこうじゃ祝日が始まるんで すごい人出だ。ダ ほう、どれ。 『赤と黒』か。面白い本か?ア ええ、面白いわ。ガ 戦争ものだろ。 黒の側はどこの国だ? アメリカか、どっかか?ア (笑い)ガ はは、俺『赤と白』の間違いじゃないかと思ったよ。 さあ手をよく洗おう。ダ あなた、今帰ったの?ガ ええ。ダ お茶よ。ガ はい、はい。すぐに。ア その腕どうしたの?ガ ああ、これか?何人かのしてやったんだ。ア けんか?ガ いや。大したけんかじゃない。 俺の給料が少なかったんだ。 それで給料の査定表をみたら 面と向かって物を言うことが出来ない 何人かの給料がピンはねされていて ドルジバトという奴が 余計に貰っていたんだ。ダ ほう。ガ それで面と向かって言ってやった。 そしたら取り巻き連中が ドルジバトをかばって 俺に飛びかかってきたんだ。ダ へー。ガ 「ひげ面」って 人を馬鹿にする奴がいるんだ。 俺、思い切りなぐったら 壁にぶっ飛んだよ。 きっと気絶しただろうな。ダ おや、そんなことしちゃ駄目だよ。 誰からも相手にされなくなる。ア 正しいことのためなら 構わないじゃない。ガ その通りさ。 白黒つけるべきさ。 あのダグワの給料まで ピンはねしてるんだから。ア ダグワさん、面と向かって 人に何も言えない人でしょう。ガ そうさ。 まあ見てろ。 こんなこと、やめさせてやるから。 ナーダムの後、見てな。 あんたら二人も ナーダム見るんだろう。ダ 私たち、とても見に行けないわよ。ガ 俺アリョナーを抱いて行くよ。ア あら、いやだ。ガ どうして。何でいけない。 構わないじゃないか。ダ 私、もうクラブに行くわ。遅れてしまう。 パーティーの前に掃除を済ませないと。若者 青白き天の主として生まれたり我は 三日月めぐる遥か遥かな軌道に 遠き2つの星の巡り合うわずかの間に 二つの瞳の片隅にかすかに青く瞬く彼方にバダルチ どれ、ほら、最初はこのキーからだぞ。ひげ ああ。バ 始めるぞ。3。 /雁のひなが外で鳴いている。 やめてくださいよ、ダワージャブさん。 練習中なんだよ。困った人だなあ。 あっちへ行った。 さあもう一度。クラブ主任 ダワージャブさん。ダ はい。ク あなた、今夜のパーティーに来て下さい。 たくさんの人が来ますよ。ダ 分かりました、来ます。 ガ こんなもんでどうかな?ア とても素敵だわ。ガ 本当か?ア 本当に素敵よ。ガ アリョナー、香水くれないか。 ちょっと付けたいんだ。ア 女性用だけどいい?ガ ええ?男物と女物があるのか? そうだな、人がどう思うかな。 まあいい、ハンカチに 沁み込ませていこう。 女物の香水って こんなんなんだな。ア あなた見違えたわ。ガ いやあ、着てる物が変わっただけで 中身が変わるもんか。ア 中身も変わるのよ。ガ かもな。議論してもしょうがない。 帰ったらパーティーの様子話してやるよ。 ギンギンに踊って来るからな。 じゃあな。郡長 革命記念日に向けた社会主義生産競争に 大きな成果を出された若干の組織と個人に 賞を贈ります。 船積み場の責任者、ドゥージー氏。(スヘー うちの主任が賞をもらった。)ドゥージー さあドルジバトさん、おめでとう。郡長 小売り仕入れ部門の経理担当、ダリスレン。 建設生産大隊の大工、ナンザド。ナンザド ありがとうございます。郡長 船積み場の人夫、バダルチ氏。ひげ おい、バダルチ。バダルチ ありがとうございます。バ ありがとう。 この俺が賞をもらうなんて。ガ ダワージャブさん、踊らないの?ダ 仕事中なんだよ。 そうでしょ。警察官 踊って構わんさ。ガ 俺帰ろうかな。ダ そうしたら。ひげ おい、こっち来い。 上の方に告げ口したのはこいつだよ。 俺たちのような下っ端の労働者の言うことなんざ まともに取り合ってくれんさ。ガ そんな物言いを誰が教えた。 そいつに言うんだな。 余計に金をもらって そんなに嬉しいか。 俺にこれ以上手を出したら 痛い目を見るぞ。 法律って物があるからな。 きっとそいつだけを裁く 法律なんてのはないだろうがな。 お前、ちょっと来い。 お前に言っておきたいことがある。 こいつらを自分の友達だと思っているのか。 お前こいつらにいいように操られてるぞ。 おはじきの玉みたいに弾かれてな。 惜しいよ。こんないい男が。残念だよ。バ お前こんな所で油を売っているより 友達の所に言ったらどうだ。 あいつテレビを買ったらしいぞ。 ふたりで並んで見るんだな。ダ おや、ガラー。ガ それを消すんだ。 それを消せって言ってるんだ。 馬鹿な奴だ。そんなの映らない。 来年中継所が出来て映るんだ。 どうしてそんなに夢中になっているんだ。 人の笑い者にされて。 俺とお前をダシにして あのサングラス野郎 クラブで笑ってるぞ。 それは映らないんだ。 分かったか。ダ 映るよ。映るさ。ガ どうして分からないんだ。ダ 映るよ。映る。 外に出てみろ。出て。ガ もうたくさんだ。 お前どうするつもりだ。ダ あれを見な。ガ 何だあれは。 映らない。映らない。 (意固地になるな。)ダ アンテナだ。ここに書いてある。 映るよ。
No4セ お前、外に出てみなさいよ。 波を見ていると長生きするって言うじゃないか。ア 私出ないわ。セ 何言っているの。 身体を気遣ってばかりいると、 かえって身体に悪いよ。 外の風に当たるんだ。ダ ひとつのこと考えはじめたら そのことばかり考える、 困った子なの。セ いいのよ。ガ おや、こんにちわ。 セルチマーおばさん。セ ああ。こんにちわ。ガ いつ来たんです。セ ああ、今日さ。ダ ほら、お茶飲みなさいよ。ガ お茶より、金槌貸してくれないか。ダ ええ。 はい。ガ これをここに打ち付けるんだ。ダ 鏡をどうするんだい。ガ ああ。ダ うちにも鏡ならあるよ。ガ この鏡にはちょっとした仕掛けがあるんだ。ダ (笑い)ガ 湖が見えるかい。セ ええ、見えるよ。ガ アリョナー、そこから見えるかい。 これでどうだ?セ・ア 見えるわ。見えるわ。 さあ座って、お茶をお飲み。 お菓子も食べて。ガ うちの者は元気だろ。セ 元気だとも。ガ 仕事に遅れる。もう行かなきゃ。セ おや、行くのかい。 ほんとに、うまいこと考えたよ。 鏡をつけるだなんて。 私にはとても思いつかないよ。ダ とても親切で、陽気な若者だわ。セ ああ。ガ うちの者に近々帰ると言ってくれ。セ ええ。ダ 私ら二人をよく助けてくれる。セ そうだとも。そうだとも。 あの子の両親とうちは隣同士さ。 すこし気は短いけどね。 補助生産大隊で漁師をしていたんだが、 人とけんかでもしたのか、どうしたのか、 今は船積み場の人夫をしているということだよ、ダ そうだわ。かなりきつい仕事らしいわ。放送 お知らせします。お知らせします。 今夜、郡のクラブにおいて 19時より ソ連の劇映画『愛を大切に』という題の 興味深い新作のカラー映画を上映します。 郡の多くの勤労者の方が鑑賞されること望みます。 子供は入場禁止です。子供は入場禁止です。 ご注意下さい。子供は入れません。 ア お母さん。ダ どうしたの。恐いことでもあった?ア いいえ。ダ そう、じゃあ母さん食事を作るわね。ア さっき、あそこで3人の人がお酒を飲んでたの。ダ どこで?ここに入ってきたの?ア いいえ。ダ はあ。ア お母さん、仕事はきつい?ダ 何できついもんかね。 クラブは小さいし、 クラブの主任も映写技師も 二人ともいい若者よ。ア ここの人たちみんないい人たちね。ダ ガラーが帰って来た。 母さん、お茶を入れてやるわ。ア お茶なら魔法瓶にあるわよ。ダ 本当、そうだったね。ダ お茶に呼ぶわ。 ガラー、ガラー。 かわいそうに、眠ってるわ。 母さん、食事を作ってから起こすわ。 独り者はたいへんね。 仕事から疲れて帰ってきても お茶も食事もないんだから。 よく、身体が持つわ。ア お母さん。ダ え。ア ガラーさん、どうして結婚しないのかしら。ダ 奥さん、出て行っちゃったそうよ。ア 何てひどい人なの。 ガラーさん、陽気でいい人なのに。ダ きっと気が合わなくって 出ていったのよ。ア それで今どこにいるの?ダ この北の第3生産大隊で 看護婦をしているそうよ。 子供ひとりと。ア 子供と?じゃあ、子供を連れて出ていった ということ?ダ こんな仕事をしている人が 子供の世話なんか出来るわけないでしょ。ア どうして?保育園に預けてもいいじゃない。 それか、私がいっしょに遊んでやってもいいわ。ダ お前、あまりいろいろなこと聞いて 困らせるんじゃないよ。 妻に捨てられた男と言うのは あまり人聞きのいいものじゃないから。ア そうね。ガ なんで俺の給料がたったの360トゥグルクなんだ。経理 たったの360だって?ガ ああ。経理 「働いただけ取る」というのが社会主義の原則だろう。 「文句言うより、がっちり握れ」というし。 ここにサインするんだ。ガ ダグワ。ダ はいな。ガ こっちに来い。 給料いくらもらった?ダ 360.ガ 人と同じように働いたんだから 人と同じようにもらえるはずだろう。ダ その通りさ。こうして引かれちゃうんだ。ガ 給料の査定はドルジバトがやってるんだろう。ダ そうさ。ガ あいつらグルになって、 俺たちを馬鹿にしてるんだ。 それでよくお前たち黙っているな。ダ ガラー、よせ。よすんだ。ド おい、ドアの鍵かけてなかったのか? やあ、ガラー。給料はもらったんだろ?ガ あんたら、どうして給料をさっ引くんだ。ド 俺がどうして知っている。 主任か経理に聞かんか。ガ ダグワと俺は、こいつらと同じように 働いて、たったの360トゥグルクしか貰わない。 なのにどうして、こいつらは 千トゥグルク以上もらっているんだ。バダルチ お前、俺たちと張り合おうってのか? 言ったはずだぞ、口を慎めってな。ガ お前いつ仕事してた。えー?ひげ もう一度言ってみろ。まだ張り合う気か。ガ やめろ。お前らが何をしているのか分かっているんだぞ。ド さあ、みんな、帰るんだ。 ひょっとしたら面倒なことになるかもしれん。 みんな帰ろう。ガ 俺のだけじゃない。ほかにも何人かピンはねしているんだ。 訴えてやるからな。ひげ 何のつもりだ?ガ よく覚えとけ。 お前、どうするつもりだ? 「投書箱」
No1ダワージャブ お前、外に出ない?アリョナー お母さん、自分が出たら。ダ おや、母さんの故郷が見えているよ。 お前、本当に出ないのかい?ア 出ないわよ。女(トヤー) おや、なんて素敵なの。男 魚取るんだ。 トヤーなら30トゥグルクの飴1個で 引っかかるさ。男2 そりゃ、あんまりだ。 30トゥグルクの飴たった1個で 釣れるもんか。ダ お前、気分が悪いの? 私、気分が良くないの。 もうそろそろ着くわ。 セルチマーおばさんが待っててくれているはずよ。 セルチマーおばさんが来てなかったら 私たち2人どうしましょう? まあ、何とかなるわ。若者 どれ、 押してくれ。 僕が持ち上げるよ。 それ、1、2,3. どうもありがとう、おばさん。 ありがとう。娘 なんて馬鹿力のおばさんなんだ。若者 二人とも恥ずかしいな。ダ 元気でした?セルチマー ああ、よくきたね。若者 みんな、はぐれないようにするんだぞ。娘 分かったわ。セ あの子はどこ?ダ あそこよ。(若者1 あの子どうしたんだろう。)若者2 あの子船室から一歩も出なかったわ。娘 かわいそうに、足どうしたのかしら。男 こんにちわ。セ、ダ こんにちわ。セ こうして、来てくれるだなんて。 いつ来るかいつ来るかと 来る日を指折り数えていたのよ。 うちは羊に塩をやりに 今日明日中に移動することになって。(ダ そう。)セ 兄さんと姉さん身体の調子はどう?セ ああ、うちの人は大丈夫。 でも私のこの足が調子良くなくて。アリョナー 帽子取って。ダ はい。セ あんたひどく疲れてる様子だよ。 娘の看病で、疲れて当然だわね。 あそこ、あの家に住むのよ。 最初は湧き水の側に ゲルを建てようかと思ったんだけど、 人里離れたところに二人をおくのもどうかと 思ってやめたの。ダ さあ、やっと着いたわ。 10日間もかかったわ。 あなた、疲れた?ア いいえ。ダ 疲れたはずだわ。セ ここはアリョナーに静かでいいわ。 うちに来たら 人が多くてますます疲れるでしょ。ガラー こんにちわ。ダ、ア こんにちわ。セ あんた、何だって仕事に行かないの?ガ 今行くところさ。セ ガラー。 おい、ガラー。 ちょっと。 この子を運んでやって。ダ ほら、あなた。セ ほら、持ち上げて。持ち上げて。 さあ、首を抱えるのよ。ダ さあ。ガ どれ。 俺、外の荷物を運んでくる。 ダ はい。これ取って。 いい家だわ。 私たち2人が何ヶ月か住むには十分。セ あそこに置いて。ガラー ああ。セ 必要なものはみんな あの棚の中にあるから。 もし足りないものがあれば、この人から借りたらいい。ガ そうしな。言ってくれよ。うちになければ、 よそから借りてあげるから。セ かわいそうに、この子。 ひどく疲れたのね。 さあ、お茶をお飲み。ダグワ ガラー。ガ え?ダ ボスが呼んでる。ガ え、ああ、ああ。ダ 早くしろって 怒っているよ。(ガ ああ、すぐに。)セ 汚くしてるわね。 よそから来た人に 恥ずかしくないの。 部屋をよく掃除して、 あの子が外に出る時には手伝ってやりなさい。 分かった?ガ はい、はい。 さあ、行くぞ。セ それから、休みで帰る時 父さんの帽子を買って来てって 母さんが言っていたわよ。ガ はい、はい。ダ 本当に掃除した方がいいな。 あそこにすごいのが来たぞ。ガ 知ってる、知ってる。 船が来たんだろう。ダ 違う。お前、、、ガ そう、映画か?ダ 違う、青~い、ガ 歌舞団か?県都から来たんだろ? 晩二人で見に行こう。 ベッドの布団を直して。
No9ア うちにどんな車が来ているのかしら。ガ 船積み場のトラックらしい。ア 父さんが来てくれたんじゃないかしら。運転手 おい、ガラー、こっち来い。 お前、俺を悪く思うなよ。 ドルジバトさんの休暇祝いに ヤギの丸焼きをやるんだ。 そしたら、お前のところの ニャムスレンが、荷物運んでくれって 聞かないんだ。 悪く思うんじゃないぞ。ガ 気にするな。大丈夫だ。 ニャムスレン、こんちわ。ダ どうしたの?ア 何でもないわ。 ガ 俺の噂聞いたのか?ニャムスレン 上司につかみかかって、 殴ったですって、いすや机を壊したですって。 あなたのような人、この辺じゃ他にいないわ。 あなた、こんなことになっていたのね。 真っ先に声を上げて、騒ぎ立てて。 あなたが人並みでいたら、別れなかったはずだわ。 子供のこともあるしね。ガ ドルジバトのような奴は殴っても足りない。ニャ あなたが人を殴るってどういうこと。 ろくすっぽ殴れもしないのに。 私、母の箪笥と自分のもの持っていくわ。ガ 俺に断わらなくてもいいさ。 俺、車に積んでやるよ。ニャ 結構よ。 人目が悪いでしょ。 あなた男なんだから。ガ 積んでやるったら。運転手 どれ。ガ じゃ、またな。運転手 ああ。ニャ ねえ、ガラー。 あの鏡忘れてわ。 取ってきて。ガ 2年間一緒にいた記念に残していけよ。ニャ いやよ。「女性の日」に賞でもらった鏡よ。ガ あの鏡、人に貸しているんだ。 あとで返すよ。いいな。ニャ 人に貸したですって? ははあ。 私、返してもらうわ。ガ 待て。後で届けてやるから。ニャ あたしの物でしょ。ニャ どいてよ。ガ 後で返すって言ってるだろうが。ニャ このドア開けて。 私の鏡、返して。 開けってたら。ア お母さん、仕事終わったの?ダ 風が出てきたんで、 セーターを持って来たんだよ。 船積み場に検査が来たそうよ。 ドルジバトさんの仕事を調べるんだわ。 ガラーをハトガルに連行するって 警察が来てるわ。 人を殴ったんだわ。ア ガラーが?まさか。ダ 本当よ。 自分とこの生産大隊の長を殴ったんですって。 みんなが殴ったの、掴みかかったのと言っていたの、 本当らしいわ。 母さん会って来るわ。 二人で行くかい?ア いいえ。ダ じゃあ、母さん会いに行ってくるからね。運転手 おい、みんな。トラックが道から落ちそうだ。 降りてくれ。降りてくれ。ドルジバト 静かに。静かに。 動くんじゃない。 えらいことになったぞ、みんな。 後ろから一人ずつ、早く降りろ。 すわるんだ。ガ 俺、ハトガルにダンプカーの教習を受けに行くんだ。ア 嘘よ。あなた嘘を言ってるわ。 あなた人に殴られたのに、自分が殴ったって、 いつも嘘を言ってるんでしょ。 うそつき。ガ 俺、すぐに戻るから。 分かるだろう、アリョナー?ア 嘘だわ。私をだましているのよ。 ダンプカーの教習ってのも嘘。 私をだましているのよ。 ガラー!ガ 立ったぞ。立ったんだ。 みんな。 アリョナーが自分の足で立ったんだ。 見えるか、見えるか? アリョナー、アリョナー。 すぐに、すぐに戻ってくるからな。 すぐに戻ってくるぞ。 戻るからな。 アリョナー! 完
No2ドルジバト さあ、みんな。 まず壊れやすいものをあの車に積んで 店まで運んで下ろすんだ。 それから羊毛を運ぶ。 さあ、急げ。若者 ちょっと、ボス。 このテレビ、これだけで映るの? それともアンテナとかが要るの?若者2 来年特別なアンテナをつけるそうだ。ひげ男 ほー、今年はナーダムの相撲を見ようと思ったのに だめだな。 じゃ、こんなゴミに用はない。ド さあ、急いだ。急いだ。若者3 それなのに持ってきたのか。男 そうさ。若者4 映らないのに1年も前に持ってくるなんて。ド 俺の知ったことか。 さあ、気をつけて、気をつけて。 壊したら弁償だぞ。ガ テレビやラジオのことなら 俺たちよりこいつが良く知っているよ。ド ああ、そうか。 さあ、運んだ。 さあ、ぼやぼやするな。 どれ。 ほら、立つんだ。 そこの二人、それを早く運び出すんだ。 気をつけて。ほら、急げ。ガ どれ、刺がささったの? アリョナーを、何で外に出さないんです。ダ 長旅で疲れたせいか、 身体の調子が良くなくて、医者に見てもらったの。ガ そしたら何て?ダ いえ、処方箋を書いてくれたわ。 知らない人ばかりで 気に病むのか 外に出ようとしないの。 あなた、ちょっと言ってくれない?ガ はは、そうさなあ。 俺の言うことなんか聞くかな。ラジカセ(父) 綿入り服を持っていった方がいいぞ。 ハンハのあたりは寒いからな。 秋は雪が早く降るしな。 二人が出発したらセルチマーおばさんに 連絡するよ。(ダ) そうして。 さあ、服を着なさい。 どれ。(父) 着せてやるよ。 もうちょっと身体を起こして。 9月に休暇が取れたら 父さんも行くよ。(アリョナー) きっと来てね。お父さん。(父) 行くよ。(ダ) 穀物の収穫の時期なのに、 あんたに休暇が取れるもんですか。 私たちなら心配は要らないわ。 知らない土地に行くわけでもなし。(父) お前の上司によく話しておくよ。 行くからには故郷で ひと夏過ごして来た方がいいからな。ガ アリョナー、外に出たらどうだい。 景色でも見なよ。 こんなにいい天気なのに 一日中ベッドにいるなんて。 近いうちここでもテレビが見られるようになるかも。ダ ほう。ガ テレビが見られたらすごいぞ。 まるで映画さ。 県都の親戚のところで見せてもらった。 相撲の試合をな。ダ ふふ。ガ 近いうちこの辺りに大きな鉱山の町が出来る。 鉱山に入って ダンプカーの運転手になろうと思っているんだ。 すごいぞ、ダンプカーは。 ヤクの種オスってところさ。ははは。ガ ここには、見るものがいっぱいさ。 毎晩映画をやるし 実習の学生たちが来たから パーティーもすごく盛り上がる。ア どんな楽器があるの?ガ え。ア 楽器はどんなの?ガ ははあ、いろいろさ。 前はエレキ・ギターが2本あったけど、 この冬ある男が調弦するって言って 弦をみんな切っちゃった。 それからアコーデオンだけが楽器さ。 学生たちがラジカセを持って来たらしいが、 パーティーすると言っても貸してくれない。ア 何て人たちでしょう。ガ そうさ、ここには変わった奴がいっぱいさ。 おととし、この町に食堂の装飾に デザイナーが来たんだ。 そいつのズボンには 真鍮のボタンがいっぱいついていた。 シャツには 見たこともない文字が並んでいる。 そしたら、女たちがそいつに夢中になり 俺たち土地の若者を無視し出した。 ある日そのデザイナーが 風呂に入っている間に 服を残らず隠してやったんだ。ア そしたら。ガ いや、そしたら、いや、 窃盗の疑いで、もう少しで 刑務所に入るところさ。 こんな具合さ。ア あなた本当に変わってるわ。ガ あいつ、真鍮のボタンで、持てたんだ。 すっ裸になって並んだら みんな同じさ。 それで、ここの娘のひとりが 妊娠して残された。 おや、お前の母さん、どこ行った?ア 湧き水に行ったらしいわ。 入れ物持って出ていったから。ガ 湧き水って?ア ムストのよ。 私に毎日飲ませてくれるの。ガ ムスト? そんなに遠くにか? それで歩いていったのか、ええ?ア 知らないわ。ガ おや、俺になぜ言わないんだ。 そうか、それじゃ追いかけよう。ガ おばさん、どうしたんだ?ダ あの子に効くはずなのよ。 いい湧き水だって言うから。 治るんじゃないかと思って。ガ アリョナーは何歳だ?ダ 19よ。ガ はあ、へへ。 うちの妹よりひとつ下だな。ダ 女の子はむずかしいわ。 医者はよく療養しなさい、治るからって言うけど。 でも、どうだか。 もう3年も経つもの。 あんたそんな大きな入れ物どうするの?ガ ああ、湧き水を一度に運んだら おばさんたち楽だろうと思って。ダ はは。そうはそうなんだけどね。 近くにあるんだから毎日新鮮なのを 飲ませようと思って。 毎朝汲みに来って、たいしたことないから。ガ いや、せっかく来たんだから 少しだけでも入れていこうよ。ダ いいわよ、そんな。疲れるだけよ。
No6
ラジカセ(娘1)あんた何でついてくるのって言ったら、
お前が一人じゃ退屈だろうと思ったからさ、だって。
私言ってやったわ。
あなたといる方が一人でいるより退屈よって。
さあ、おしゃべりはこのぐらいで
行きましょうか。
(娘2) そうしましょう。
(ア) 二人とももう帰るの?
(娘2) 私たち帰るわ。補習なの。
(娘1) また来るわ。
(娘3) 明日先生が男の子達を連れて
見舞いに来ると言ってたわ。
さようなら。
(ア) さようなら。
ガ みんな、まだ騒いでいる。
音楽は大音響だし
学生たちは踊りに夢中だ。
どうした、退屈したのか?
ア なんで早く帰って来たの?
ガ ああ俺か?
お前さんの話し相手になろうと思って。
ア お母さんは?まだいるの?
ガ いるよ。
俺おばさんがまだいられるようにと思って。
ほら、聞こえるだろ?
これでエレキ・ギターや点滅ライトがあったら
いいのに。
ア 踊ってこなかったの?
ガ ああ、酔っ払いが何人か
ふらふらしていて
俺に絡んできたんだ。
だから、俺やっつけてやったよ。
その上ダグワをまた馬鹿にしたんだ。
あいつらに比べたらダグワは技師だよ。
何でも作れるんだ。
今度はテレビを映すって張り切ってる。
俺は弱い者を馬鹿にする奴等は
我慢が出来ない。
徹底的にやっつけてやった。
ざまあみろ。
ア ほかの面白いことない?
ガ 面白くないのか。
ア いえ、他の話は?いつもけんかの話ばかりじゃない。
ガ ほかに何に話すんだ。何を。
ア 何だっていいわ。
ガ 俺が小さいころどんな子だったと思う?
ア そうね、わんぱくだったと思うわ。
ガ おとなしい子供なんでいないさ。
ア そうして?
ガ 子供だからさ。
俺はおとなしい子だと言われていたんだ。
小さい時競馬に出る馬が
繋いであるのを放してやったんだ。
草が食べられなくて、かわいそうと思ってさ。
そしたら次の朝探すのにひと騒動さ。
ア それからどうしたの?
ガ どうって。
草をいっぱい食べた馬が競馬に出られるかい。
太った人間が競走に出るようなもんさ。
テレビ 緊張しているところを腕をつかまれ引っぱられ、
バランスを崩して手と足で身体を支える体勢になっています。
手を地面について持ちこたえました。
ツェレントクトホ横綱は、
相手の足を取りにいこうとしているようです。
取りました。決まりました。
相手を油断させたところで、
何年も前に出していたこの技を
また出したのです。たいしたものです。
勤労協会所属、モンゴル人民共和国の
「衆の記憶となる、海の広さの、神聖なる横綱」
ツェレントクトホ、決勝進出。
モンゴル・ピオネール児童会館所属、
ツェレンフーが勝ち、アルタンホヤグに土がつきました。
少年の部、64人の力士の中から、
モンゴル・ピオネール児童会館所属、
ツェレンフーが優勝、
モンゴル・ピオネール児童会館所属、
アルタンホヤグが準優勝しました。
ひげ ああ、お前テレビを見せてやってるんだってな。
湖の底を見せてやるよ。
ガ おいお前ら、何するんだ。
おいやめろよ。
ひげ お前いい奴らしいが、
いかんせん、その口がいけない。
ちょっと思い知ってもらうぜ。
ガ やめろ。放すんだ。
(バダルチ おい、そいつに怪我させるんじゃないぞ。
そうだ。)
お前何見てる。
行くぞ。
プルブドルジ 奴の様子はどうだ?
ひげ いや、じたばたやっている。
バ ほっておけ。
ダグワ これでよし。
ガ これどうするんだ?
ダ 座ってみろ。
行くぞ。
ああ、抜けて。
あとは座席と背もたれをつけるだけだ。
男 倉庫の屋根が抜けて大事(おおごと)になっているぞ。
すぐ来い。急ぐんだ。
ダ 行くよ。
ダ いいかい。
ガ アリョナーのために作ってもらった。
出入りが楽になる。
倉庫の屋根が落ちて
小麦粉が水浸しになるところだった。
ダ ガラー、ほら乾いたシャツ。
ガ いいよ。部屋に戻って
着替えるから。
ダ 嬉しいでしょ。
こんないい車椅子作ってもらって。
ガ おはよう。
ア ええ。
ガ どんな具合だ?
ア とってもいい、快適だわ。
ガ 掃除の必要ないよ。
疲れるだけだ。
ア 大丈夫よ。
ガ 俺、明日きれいな景色を見せてやるからな。
その車椅子ならどこだって行けるさ。
俺のダグワは、まったく器用な奴だ。
あっという間に作ってくれたんだから。
No7
ガ さあ、どうだ?
ア きれい、本当に美しいわ。
ガ こりゃなんてかわいい子だ。
ア うちのクラスにナランゲレルって女の子がいたの。
彼女、子供を産んだそうよ。
ガ そう。
ア チムゲーって言う子は最近結婚したんだって。
眠っちゃったのね。
ガ いいや。
ア 私の話退屈なの?
ガ そんなこと。
ア 私、いつも人のお荷物になってるわ。
ガ アリョナー、なんてこと言うんだ。
そんな風に考えちゃだめだ。
沈むな。落ち込むんじゃない。
きっと治る、俺には分かるんだ。
自分が必ず治るといつも思ってなきゃ。
信じることが大切なんだ、 アリョナー。
立派な夫を持って、
子供を産むんだ。
子供をたくさんな。
たくさん子供を作るんだ。
ア 本当。子供が多いといいわよね。
ガ 子供は可愛いもんだよ。
ア あなた、子供のこと思い出す?
ガ どうして知ってるんだ。
ア あの鏡、何でも映すのよ。
ガ 鏡って?
ア ドアに打ち付けてくれた鏡よ。
ガ 俺、どうしてか、ニャムスレンが
子供を連れて戻ってくると
信じているんだ。
ア そしたら、うれしい?
ガ もちろんさ。うれしいよ。
ア 子供を連れてきたら。
私が見てあげるわ。いいでしょ。
ガ 妻が可愛そうだ。
どうした。
具合が悪いのか?
どれ、セーター着るんだ。
ア いいえ。
ガ これはセルチマーおばさんがあなたにって。
ダ こんなに気を遣って。
お食べ。
ア ええ。
ガ この乳は少しだけど、
うちの両親からアリョナーにって。
ア ありがとう。
ガ この靴はあなたに。
うちのお袋が乳搾りにはいてたのさ。
気にしないでいいよ。
湧き水に行く時に履いてけば。
ダ 重いんじゃないかしら。
ガ 俺、馬を連れてきたんだ。
馬に乗って行けばいいさ。
ほら。
ダ あら本当。
ガ これはお前さんに持ってきた。
足が暖かいぞ。
ア 私そんなの履かないわ。
みっともない。
ガ そうか、俺、部屋に戻るよ。
ダ 足が暖かいだろうって持ってきてくれたのよ。
気を悪くしたじゃない。
ガ この敷居を取ったら出入りが楽になるぞ。
ア お母さん。車椅子の通り道を作ってくれてるの。
ガ アリョナーの通り道を。
ダ モンゴル人なのに何ってことを。
敷居は切るどころか踏むのもいけないのに。
すぐにやめなさい。
ガ こりゃ、失敗だった。
待ってな。よいっしょ。
ア なんて奇麗なんでしょう。
波のある湖は恐いわ。
ガ 波は素晴らしいよ。
水面に溜まったゴミを
浜辺に打ち上げてくれるんだから。
ア ガラーさん、あのおばあさん
いつも岸のゴミを拾って歩いているわ。
ガ ああ、あれか。
「海の母」。
永遠の命を持つって話だ。
うちの親父の若いころも
あのばあさんがいたって言っている。
うちの者たちはすこし大袈裟なんだ。
ア なぜ大袈裟なの。
ガ 人間に永遠の命なんてあるもんか。
ア あるわよ。あるわ。
ガ ええ?
ア 人生の素晴らしい愛が
永遠じゃないって言うの。
ガ 分からない。ああ、そうかもな。
ア 私はそう信じているの。
あなたも信じて。
そう信じないとぞっとするもの。
ガ 主任、お呼びですか?
主任 そうだ、そこに座れ。
君の出した不満について
特に人に命じて調べさせてみた。
だがそのような
事実はないと言うことだ。
ガ 何、
そんな事実がないだって?
主任 そうだ。そういう事実はないそうだ。
君も若い。
不満があってもいい。
批判もいい。
だが物事に軽率であってはいかん。
分かったか?
ガ そしたら俺は、そしたら、
事実無根のことを言ったということか?
このことはみんなが知っている。
面倒がいやだから
言わないだけなんだ。
主任 お前のほかに同じ不満を言うものはいない。
聞けば、君は何かと言えば人を訴える人間だそうだ。
こんな根拠のない讒言は
集団の団結に悪い影響を与える。
今回は
見逃してやろう。
またこんなことがあったら、
今日のようにはいかないぞ。
分かったか?
分かったなら、仕事に戻れ。
ガ 分からない。
主任 何。分からないだと。
人を誣告したら罪になるのは
知ってるだろう。
ガ あんたを誠実な人間だと思ってたのに。
主任 さあさ、出ろ。
No3
ダ さあ、湧き水飲んで。
マッサージするわ。
二人で外に出てみましょう。そうしない?
ここの景色を見たら心が晴れるだろうって
わざわざ遠くからお前を担いできた
母さんを思って。
天気のいい日に湖の水を見たら
どんなに素晴らしいことか。
二人で外に出ましょう。
ア 私、外に出ないって言ってるでしょ。
ダ お前がこんな風に黙ってばかりいたら
母さん、身の置き場所がないんだよ。
ア お母さん、何か仕事したら。
ガラーさん、何か見つかるって言っていたし。
私たち長い間いるんですもの、
何だっていいじゃない。
そうでしょ、お母さん。そうしなさいよ。
ダ 本当はそうしたいんだけど、
お前を一人にはしとけないよ。
ア 食事の用意だけしてくれればいいのよ。
私寝ているから。
ダ そう、じゃガラーさんに聞いてみようかねえ?
ア そうしなさいよ。
ダ どれ。
ア いやよ、赤ちゃんみたい。
ア お母さん、近くに保育園があるわ。
ダ どうして?
ア 10時ごろ、子供たちが歌を歌ってたもの。
ダ そうよ。近くに保育園があるの。
子供たちが外で、遊んでいるのが見えるよ。
ア あー。
ダ そうよ、二人で外に出ましょう。
そうしない?母さんの頼みよ。
ラジオ それぞれの単位で働く人間の行動は
最終的な生産性に直接、
目に見える影響を与えるものである。
このことを個人そして勤労者集団のそれぞれが
特に注意をする必要がある。
このことから個人に集団の及ぼす影響、
個人が集団に対して見本となることの
問題が生じてくるのである。
集団の中での人間形成の過程に
その集団の成員それぞれの
知識、教養、文化水準、修練度が
大きく作用するのである。
バダルチ お茶にしないか。
バトムンフ どれ、注いでくれ。
若者 そこに注いだのがあるだろう。
若者2 なんて熱いんだ。
若者3 じゃ、自分で注ぐんだな。
バ おい、ひとの自転車をいじるんじゃない。
やめろ。
若者4 こんなおんぼろがそんなに大事か?
若者1 おい、おい、こっちにも。
バ さあ、ガラー。
魚を捕るといって一日中
ボートの上で寝ているのと比べて、
どうだ?えー。
ダグワ よいっしょ。
若者2 じゃ、運んでけ。
ガラー おい、ダグワ、ちょっと休め。
ダ いいよ。
バ 勝手にやらせておけ。
ひげ あいつ少しでも多く稼いで
テレビを買うつもりさ。
ガ そう思って何が悪いんだ。
あいつもお前と同じ人間だぞ。
ひげ へっ。
バ おい、お前。
「口は禍の元」ということわざを
きっとお前も聞いたことがあるだろう。
お前は言い争いばかりして
行き所のなくなった人間だ。
口を慎まないと、しまいには
あのダグワのように
吃りになってしまうかも知れないぞ。
ははは。
プルブドルジ おい、みんな。
あいつの手綱を今からきつく
締め上げておかないと駄目だぞ。
手のつけられない奴だからな。
ド おーい、ガラー。こっちこい。
ガ ああ。
ド すわれ。
みんな、同じ休むにしても
役に立つ休み方と言うものがある。
暇さえあれば互いをけなしあっている。
こんな風な休み方なら、しない方がいい。
いいか、みんな。
集団の中での人間形成の過程に
その集団の成員それぞれの
知識、教養、文化水準、修練度が
大きく作用する。
なのに、うちではこのことを
省みない行動が多く見られる。
いいか、みんな。どうしたらいい?
少しでも暇があったら
お互いを教育しあうんだ。
教養のある者はない者を、
経験のある者はない者を
助けなくてはいかん。
分かったか?
みんな 分かりました。
ド じゃ、みんな仕事を始めるんだ。
時間だ。
みんな はい。
ガ あんなきれいな娘が寝たっきりとはな。
魔法が出来たら治してやれるのに。
人間は心から治るというのは本当かな?
そうなら、あのダグワの吃りも治してやりたい。
あの鏡、まぶしいぞ。
No8
ア どうかしたの?
ガ 大丈夫さ。ちょっと疲れただけさ。
一日何してた。
ア うちにいたわ。
ガ 構うな。自分に注げ。
俺、朝お茶飲んだから。
ア ガラーさん。
ガ 何だ?
ア ちょっと聞いていい?
ガ いいよ。
ア この前殴られたの?
ガ 誰がそんなこと。
ア それで着ていたシャツの袖が
破れて、ボタンが飛んでいたんでしょう。
ガ 誰に殴られたって?
ア 何も隠すことないわ。
殴られたって言うのが恥ずかしいの?
どうしたんだろうって、
すごく心配したのよ。
あの人たち本当に恐い人たちだわ。
ガ え、ここに来たのか?
ア 鏡に映ったのよ。
ガ バトムンフ、こっち来い。
ありがと。あの自転車の代金だ。
バトムンフ 要らないよ。
ガ 遠慮するな。
今受け取らないと、
使っちまうぞ。ほら。
バ 俺はそんなに乗らなかったから。
でもお前、いいものを作ったよ。
あの娘の役に立った。
ガ 受け取れ。
かみさんにやれ。
怒っているだろう。
おかしいな。
ひげ おや、ガラー。
俺を突き落とす気か?
いや、冗談さ。
お前が仕事サボって
山に散歩させているのは
どこのお姫様だ?
ガ 関係ないだろ。
ひげ 言っとくが、ドルジバトさんがな、、、
ドルジバト おーい、ガラー、
俺の部屋にちょっと来るんだ。
ガ ええ。
ひげ 休暇を取るんだ。
おれたち20トゥグルクずつ出しあって
ヤギの丸焼きをするつもりだ。
お前も20トゥグルク出せ。
ガ 残念だが、20トゥグルク出せないな。
ひげ はあ、こいつら全く付き合いが悪いな。
ガ 入ってもいい?
ドルジバト ああ、入れ。すわれ。
給料もらったか?不満はないだろう。
おや、お前まだ文句があるのか?
文句を言うから、100トゥグルク
上乗せしてやったんじゃないか。
この先黙って仕事をしていれば
もっと考えてやる。
さあ、行け。
ガ あんた、俺の何が欲しいんだ。
何が。ええ?
ド うるさいぞ。
ラジオを聞いているんだ。
出て行け。
ガ ああ、そうかい。
見てろよ。
ド おい、おい、お前。
ガ 俺の良心を金で買おうと言うんだな。
ド おい、お前、何するだ。
みんな、こいつを何とかしろ。
誰かいたら来てくれ。
おーい、みんな。
ガラーに殺される。ガラーに殺される。
ガ 二人とも葬式に出たように、
何で下ばかり向いている。
俺、何か間違ったことしたか?
バトムンフ 警察に出頭だなんて、
笑い事じゃないぞ。
ガ 何が恐い?
俺は事実を言ったんだ。
ダ ガラー、人様に手をあげるというのは
よっぽどのことだぞ。
正直に生きてさえすれば何とかなる。
俺たち、調査してくれって
上の方に手紙を送ったんだ。
ガ おまえら、くだらないことを。
男らしく決着をつけたらどうだ。
もういい、帰れ。
バ ああ、帰るよ。
ア あれ見て。
ダ 何?
ア ガラーさんがボートに乗っているわ。
ダ そうだね。
ア どこ行こうとしてるのかしら?
ダ 本当。
「同志ガルバドラフは、仕事仲間を信頼せず、
欠点を諭そうとした人間を攻撃し、
国家の財産を破損し、
規律違反を繰り返したことから、我々は
彼を我が集団にふさわしくない人間と判断した。
よって同志ガルバトラフを解雇することとする。」
ア 百。
海の母、
海の母。永遠の命を持つって本当かしら。
No5
ガ おや、いいことだ。
始めからこうして外に出なきゃいけなかったんだ。
ほら、むこうじゃ祝日が始まるんで
すごい人出だ。
ダ ほう、どれ。
『赤と黒』か。面白い本か?
ア ええ、面白いわ。
ガ 戦争ものだろ。
黒の側はどこの国だ?
アメリカか、どっかか?
ア (笑い)
ガ はは、俺『赤と白』の間違いじゃないかと思ったよ。
さあ手をよく洗おう。
ダ あなた、今帰ったの?
ガ ええ。
ダ お茶よ。
ガ はい、はい。すぐに。
ア その腕どうしたの?
ガ ああ、これか?何人かのしてやったんだ。
ア けんか?
ガ いや。大したけんかじゃない。
俺の給料が少なかったんだ。
それで給料の査定表をみたら
面と向かって物を言うことが出来ない
何人かの給料がピンはねされていて
ドルジバトという奴が
余計に貰っていたんだ。
ダ ほう。
ガ それで面と向かって言ってやった。
そしたら取り巻き連中が
ドルジバトをかばって
俺に飛びかかってきたんだ。
ダ へー。
ガ 「ひげ面」って
人を馬鹿にする奴がいるんだ。
俺、思い切りなぐったら
壁にぶっ飛んだよ。
きっと気絶しただろうな。
ダ おや、そんなことしちゃ駄目だよ。
誰からも相手にされなくなる。
ア 正しいことのためなら
構わないじゃない。
ガ その通りさ。
白黒つけるべきさ。
あのダグワの給料まで
ピンはねしてるんだから。
ア ダグワさん、面と向かって
人に何も言えない人でしょう。
ガ そうさ。
まあ見てろ。
こんなこと、やめさせてやるから。
ナーダムの後、見てな。
あんたら二人も
ナーダム見るんだろう。
ダ 私たち、とても見に行けないわよ。
ガ 俺アリョナーを抱いて行くよ。
ア あら、いやだ。
ガ どうして。何でいけない。
構わないじゃないか。
ダ 私、もうクラブに行くわ。遅れてしまう。
パーティーの前に掃除を済ませないと。
若者 青白き天の主として生まれたり我は
三日月めぐる遥か遥かな軌道に
遠き2つの星の巡り合うわずかの間に
二つの瞳の片隅にかすかに青く瞬く彼方に
バダルチ どれ、ほら、最初はこのキーからだぞ。
ひげ ああ。
バ 始めるぞ。3。
/雁のひなが外で鳴いている。
やめてくださいよ、ダワージャブさん。
練習中なんだよ。困った人だなあ。
あっちへ行った。
さあもう一度。
クラブ主任 ダワージャブさん。
ダ はい。
ク あなた、今夜のパーティーに来て下さい。
たくさんの人が来ますよ。
ダ 分かりました、来ます。
ガ こんなもんでどうかな?
ア とても素敵だわ。
ガ 本当か?
ア 本当に素敵よ。
ガ アリョナー、香水くれないか。
ちょっと付けたいんだ。
ア 女性用だけどいい?
ガ ええ?男物と女物があるのか?
そうだな、人がどう思うかな。
まあいい、ハンカチに
沁み込ませていこう。
女物の香水って
こんなんなんだな。
ア あなた見違えたわ。
ガ いやあ、着てる物が変わっただけで
中身が変わるもんか。
ア 中身も変わるのよ。
ガ かもな。議論してもしょうがない。
帰ったらパーティーの様子話してやるよ。
ギンギンに踊って来るからな。
じゃあな。
郡長 革命記念日に向けた社会主義生産競争に
大きな成果を出された若干の組織と個人に
賞を贈ります。
船積み場の責任者、ドゥージー氏。
(スヘー うちの主任が賞をもらった。)
ドゥージー さあドルジバトさん、おめでとう。
郡長 小売り仕入れ部門の経理担当、ダリスレン。
建設生産大隊の大工、ナンザド。
ナンザド ありがとうございます。
郡長 船積み場の人夫、バダルチ氏。
ひげ おい、バダルチ。
バダルチ ありがとうございます。
バ ありがとう。
この俺が賞をもらうなんて。
ガ ダワージャブさん、踊らないの?
ダ 仕事中なんだよ。
そうでしょ。
警察官 踊って構わんさ。
ガ 俺帰ろうかな。
ダ そうしたら。
ひげ おい、こっち来い。
上の方に告げ口したのはこいつだよ。
俺たちのような下っ端の労働者の言うことなんざ
まともに取り合ってくれんさ。
ガ そんな物言いを誰が教えた。
そいつに言うんだな。
余計に金をもらって
そんなに嬉しいか。
俺にこれ以上手を出したら
痛い目を見るぞ。
法律って物があるからな。
きっとそいつだけを裁く
法律なんてのはないだろうがな。
お前、ちょっと来い。
お前に言っておきたいことがある。
こいつらを自分の友達だと思っているのか。
お前こいつらにいいように操られてるぞ。
おはじきの玉みたいに弾かれてな。
惜しいよ。こんないい男が。残念だよ。
バ お前こんな所で油を売っているより
友達の所に言ったらどうだ。
あいつテレビを買ったらしいぞ。
ふたりで並んで見るんだな。
ダ おや、ガラー。
ガ それを消すんだ。
それを消せって言ってるんだ。
馬鹿な奴だ。そんなの映らない。
来年中継所が出来て映るんだ。
どうしてそんなに夢中になっているんだ。
人の笑い者にされて。
俺とお前をダシにして
あのサングラス野郎
クラブで笑ってるぞ。
それは映らないんだ。
分かったか。
ダ 映るよ。映るさ。
ガ どうして分からないんだ。
ダ 映るよ。映る。
外に出てみろ。出て。
ガ もうたくさんだ。
お前どうするつもりだ。
ダ あれを見な。
ガ 何だあれは。
映らない。映らない。
(意固地になるな。)
ダ アンテナだ。ここに書いてある。
映るよ。
No4
セ お前、外に出てみなさいよ。
波を見ていると長生きするって言うじゃないか。
ア 私出ないわ。
セ 何言っているの。
身体を気遣ってばかりいると、
かえって身体に悪いよ。
外の風に当たるんだ。
ダ ひとつのこと考えはじめたら
そのことばかり考える、
困った子なの。
セ いいのよ。
ガ おや、こんにちわ。
セルチマーおばさん。
セ ああ。こんにちわ。
ガ いつ来たんです。
セ ああ、今日さ。
ダ ほら、お茶飲みなさいよ。
ガ お茶より、金槌貸してくれないか。
ダ ええ。
はい。
ガ これをここに打ち付けるんだ。
ダ 鏡をどうするんだい。
ガ ああ。
ダ うちにも鏡ならあるよ。
ガ この鏡にはちょっとした仕掛けがあるんだ。
ダ (笑い)
ガ 湖が見えるかい。
セ ええ、見えるよ。
ガ アリョナー、そこから見えるかい。
これでどうだ?
セ・ア 見えるわ。見えるわ。
さあ座って、お茶をお飲み。
お菓子も食べて。
ガ うちの者は元気だろ。
セ 元気だとも。
ガ 仕事に遅れる。もう行かなきゃ。
セ おや、行くのかい。
ほんとに、うまいこと考えたよ。
鏡をつけるだなんて。
私にはとても思いつかないよ。
ダ とても親切で、陽気な若者だわ。
セ ああ。
ガ うちの者に近々帰ると言ってくれ。
セ ええ。
ダ 私ら二人をよく助けてくれる。
セ そうだとも。そうだとも。
あの子の両親とうちは隣同士さ。
すこし気は短いけどね。
補助生産大隊で漁師をしていたんだが、
人とけんかでもしたのか、どうしたのか、
今は船積み場の人夫をしているということだよ、
ダ そうだわ。かなりきつい仕事らしいわ。
放送 お知らせします。お知らせします。
今夜、郡のクラブにおいて
19時より
ソ連の劇映画『愛を大切に』という題の
興味深い新作のカラー映画を上映します。
郡の多くの勤労者の方が鑑賞されること望みます。
子供は入場禁止です。子供は入場禁止です。
ご注意下さい。子供は入れません。
ア お母さん。
ダ どうしたの。恐いことでもあった?
ア いいえ。
ダ そう、じゃあ母さん食事を作るわね。
ア さっき、あそこで3人の人がお酒を飲んでたの。
ダ どこで?ここに入ってきたの?
ア いいえ。
ダ はあ。
ア お母さん、仕事はきつい?
ダ 何できついもんかね。
クラブは小さいし、
クラブの主任も映写技師も
二人ともいい若者よ。
ア ここの人たちみんないい人たちね。
ダ ガラーが帰って来た。
母さん、お茶を入れてやるわ。
ア お茶なら魔法瓶にあるわよ。
ダ 本当、そうだったね。
ダ お茶に呼ぶわ。
ガラー、ガラー。
かわいそうに、眠ってるわ。
母さん、食事を作ってから起こすわ。
独り者はたいへんね。
仕事から疲れて帰ってきても
お茶も食事もないんだから。
よく、身体が持つわ。
ア お母さん。
ダ え。
ア ガラーさん、どうして結婚しないのかしら。
ダ 奥さん、出て行っちゃったそうよ。
ア 何てひどい人なの。
ガラーさん、陽気でいい人なのに。
ダ きっと気が合わなくって
出ていったのよ。
ア それで今どこにいるの?
ダ この北の第3生産大隊で
看護婦をしているそうよ。
子供ひとりと。
ア 子供と?じゃあ、子供を連れて出ていった
ということ?
ダ こんな仕事をしている人が
子供の世話なんか出来るわけないでしょ。
ア どうして?保育園に預けてもいいじゃない。
それか、私がいっしょに遊んでやってもいいわ。
ダ お前、あまりいろいろなこと聞いて
困らせるんじゃないよ。
妻に捨てられた男と言うのは
あまり人聞きのいいものじゃないから。
ア そうね。
ガ なんで俺の給料がたったの360トゥグルクなんだ。
経理 たったの360だって?
ガ ああ。
経理 「働いただけ取る」というのが社会主義の原則だろう。
「文句言うより、がっちり握れ」というし。
ここにサインするんだ。
ガ ダグワ。
ダ はいな。
ガ こっちに来い。
給料いくらもらった?
ダ 360.
ガ 人と同じように働いたんだから
人と同じようにもらえるはずだろう。
ダ その通りさ。こうして引かれちゃうんだ。
ガ 給料の査定はドルジバトがやってるんだろう。
ダ そうさ。
ガ あいつらグルになって、
俺たちを馬鹿にしてるんだ。
それでよくお前たち黙っているな。
ダ ガラー、よせ。よすんだ。
ド おい、ドアの鍵かけてなかったのか?
やあ、ガラー。給料はもらったんだろ?
ガ あんたら、どうして給料をさっ引くんだ。
ド 俺がどうして知っている。
主任か経理に聞かんか。
ガ ダグワと俺は、こいつらと同じように
働いて、たったの360トゥグルクしか貰わない。
なのにどうして、こいつらは
千トゥグルク以上もらっているんだ。
バダルチ お前、俺たちと張り合おうってのか?
言ったはずだぞ、口を慎めってな。
ガ お前いつ仕事してた。えー?
ひげ もう一度言ってみろ。まだ張り合う気か。
ガ やめろ。お前らが何をしているのか分かっているんだぞ。
ド さあ、みんな、帰るんだ。
ひょっとしたら面倒なことになるかもしれん。
みんな帰ろう。
ガ 俺のだけじゃない。ほかにも何人かピンはねしているんだ。
訴えてやるからな。
ひげ 何のつもりだ?
ガ よく覚えとけ。
お前、どうするつもりだ?
「投書箱」
No1
ダワージャブ お前、外に出ない?
アリョナー お母さん、自分が出たら。
ダ おや、母さんの故郷が見えているよ。
お前、本当に出ないのかい?
ア 出ないわよ。
女(トヤー) おや、なんて素敵なの。
男 魚取るんだ。
トヤーなら30トゥグルクの飴1個で
引っかかるさ。
男2 そりゃ、あんまりだ。
30トゥグルクの飴たった1個で
釣れるもんか。
ダ お前、気分が悪いの?
私、気分が良くないの。
もうそろそろ着くわ。
セルチマーおばさんが待っててくれているはずよ。
セルチマーおばさんが来てなかったら
私たち2人どうしましょう?
まあ、何とかなるわ。
若者 どれ、
押してくれ。
僕が持ち上げるよ。
それ、1、2,3.
どうもありがとう、おばさん。
ありがとう。
娘 なんて馬鹿力のおばさんなんだ。
若者 二人とも恥ずかしいな。
ダ 元気でした?
セルチマー ああ、よくきたね。
若者 みんな、はぐれないようにするんだぞ。
娘 分かったわ。
セ あの子はどこ?
ダ あそこよ。
(若者1 あの子どうしたんだろう。)
若者2 あの子船室から一歩も出なかったわ。
娘 かわいそうに、足どうしたのかしら。
男 こんにちわ。
セ、ダ こんにちわ。
セ こうして、来てくれるだなんて。
いつ来るかいつ来るかと
来る日を指折り数えていたのよ。
うちは羊に塩をやりに
今日明日中に移動することになって。
(ダ そう。)
セ 兄さんと姉さん身体の調子はどう?
セ ああ、うちの人は大丈夫。
でも私のこの足が調子良くなくて。
アリョナー 帽子取って。
ダ はい。
セ あんたひどく疲れてる様子だよ。
娘の看病で、疲れて当然だわね。
あそこ、あの家に住むのよ。
最初は湧き水の側に
ゲルを建てようかと思ったんだけど、
人里離れたところに二人をおくのもどうかと
思ってやめたの。
ダ さあ、やっと着いたわ。
10日間もかかったわ。
あなた、疲れた?
ア いいえ。
ダ 疲れたはずだわ。
セ ここはアリョナーに静かでいいわ。
うちに来たら
人が多くてますます疲れるでしょ。
ガラー こんにちわ。
ダ、ア こんにちわ。
セ あんた、何だって仕事に行かないの?
ガ 今行くところさ。
セ ガラー。
おい、ガラー。
ちょっと。
この子を運んでやって。
ダ ほら、あなた。
セ ほら、持ち上げて。持ち上げて。
さあ、首を抱えるのよ。
ダ さあ。
ガ どれ。
俺、外の荷物を運んでくる。
ダ はい。これ取って。
いい家だわ。
私たち2人が何ヶ月か住むには十分。
セ あそこに置いて。
ガラー ああ。
セ 必要なものはみんな
あの棚の中にあるから。
もし足りないものがあれば、この人から借りたらいい。
ガ そうしな。言ってくれよ。うちになければ、
よそから借りてあげるから。
セ かわいそうに、この子。
ひどく疲れたのね。
さあ、お茶をお飲み。
ダグワ ガラー。
ガ え?
ダ ボスが呼んでる。
ガ え、ああ、ああ。
ダ 早くしろって
怒っているよ。
(ガ ああ、すぐに。)
セ 汚くしてるわね。
よそから来た人に
恥ずかしくないの。
部屋をよく掃除して、
あの子が外に出る時には手伝ってやりなさい。
分かった?
ガ はい、はい。
さあ、行くぞ。
セ それから、休みで帰る時
父さんの帽子を買って来てって
母さんが言っていたわよ。
ガ はい、はい。
ダ 本当に掃除した方がいいな。
あそこにすごいのが来たぞ。
ガ 知ってる、知ってる。
船が来たんだろう。
ダ 違う。お前、、、
ガ そう、映画か?
ダ 違う、青~い、
ガ 歌舞団か?県都から来たんだろ?
晩二人で見に行こう。
ベッドの布団を直して。
No9
ア うちにどんな車が来ているのかしら。
ガ 船積み場のトラックらしい。
ア 父さんが来てくれたんじゃないかしら。
運転手 おい、ガラー、こっち来い。
お前、俺を悪く思うなよ。
ドルジバトさんの休暇祝いに
ヤギの丸焼きをやるんだ。
そしたら、お前のところの
ニャムスレンが、荷物運んでくれって
聞かないんだ。
悪く思うんじゃないぞ。
ガ 気にするな。大丈夫だ。
ニャムスレン、こんちわ。
ダ どうしたの?
ア 何でもないわ。
ガ 俺の噂聞いたのか?
ニャムスレン 上司につかみかかって、
殴ったですって、いすや机を壊したですって。
あなたのような人、この辺じゃ他にいないわ。
あなた、こんなことになっていたのね。
真っ先に声を上げて、騒ぎ立てて。
あなたが人並みでいたら、別れなかったはずだわ。
子供のこともあるしね。
ガ ドルジバトのような奴は殴っても足りない。
ニャ あなたが人を殴るってどういうこと。
ろくすっぽ殴れもしないのに。
私、母の箪笥と自分のもの持っていくわ。
ガ 俺に断わらなくてもいいさ。
俺、車に積んでやるよ。
ニャ 結構よ。
人目が悪いでしょ。
あなた男なんだから。
ガ 積んでやるったら。
運転手 どれ。
ガ じゃ、またな。
運転手 ああ。
ニャ ねえ、ガラー。
あの鏡忘れてわ。
取ってきて。
ガ 2年間一緒にいた記念に残していけよ。
ニャ いやよ。「女性の日」に賞でもらった鏡よ。
ガ あの鏡、人に貸しているんだ。
あとで返すよ。いいな。
ニャ 人に貸したですって?
ははあ。
私、返してもらうわ。
ガ 待て。後で届けてやるから。
ニャ あたしの物でしょ。
ニャ どいてよ。
ガ 後で返すって言ってるだろうが。
ニャ このドア開けて。
私の鏡、返して。
開けってたら。
ア お母さん、仕事終わったの?
ダ 風が出てきたんで、
セーターを持って来たんだよ。
船積み場に検査が来たそうよ。
ドルジバトさんの仕事を調べるんだわ。
ガラーをハトガルに連行するって
警察が来てるわ。
人を殴ったんだわ。
ア ガラーが?まさか。
ダ 本当よ。
自分とこの生産大隊の長を殴ったんですって。
みんなが殴ったの、掴みかかったのと言っていたの、
本当らしいわ。
母さん会って来るわ。
二人で行くかい?
ア いいえ。
ダ じゃあ、母さん会いに行ってくるからね。
運転手 おい、みんな。トラックが道から落ちそうだ。
降りてくれ。降りてくれ。
ドルジバト 静かに。静かに。
動くんじゃない。
えらいことになったぞ、みんな。
後ろから一人ずつ、早く降りろ。
すわるんだ。
ガ 俺、ハトガルにダンプカーの教習を受けに行くんだ。
ア 嘘よ。あなた嘘を言ってるわ。
あなた人に殴られたのに、自分が殴ったって、
いつも嘘を言ってるんでしょ。
うそつき。
ガ 俺、すぐに戻るから。
分かるだろう、アリョナー?
ア 嘘だわ。私をだましているのよ。
ダンプカーの教習ってのも嘘。
私をだましているのよ。
ガラー!
ガ 立ったぞ。立ったんだ。
みんな。
アリョナーが自分の足で立ったんだ。
見えるか、見えるか?
アリョナー、アリョナー。
すぐに、すぐに戻ってくるからな。
すぐに戻ってくるぞ。
戻るからな。
アリョナー!
完
No2
ドルジバト さあ、みんな。
まず壊れやすいものをあの車に積んで
店まで運んで下ろすんだ。
それから羊毛を運ぶ。
さあ、急げ。
若者 ちょっと、ボス。
このテレビ、これだけで映るの?
それともアンテナとかが要るの?
若者2 来年特別なアンテナをつけるそうだ。
ひげ男 ほー、今年はナーダムの相撲を見ようと思ったのに
だめだな。
じゃ、こんなゴミに用はない。
ド さあ、急いだ。急いだ。
若者3 それなのに持ってきたのか。
男 そうさ。
若者4 映らないのに1年も前に持ってくるなんて。
ド 俺の知ったことか。
さあ、気をつけて、気をつけて。
壊したら弁償だぞ。
ガ テレビやラジオのことなら
俺たちよりこいつが良く知っているよ。
ド ああ、そうか。
さあ、運んだ。
さあ、ぼやぼやするな。
どれ。
ほら、立つんだ。
そこの二人、それを早く運び出すんだ。
気をつけて。ほら、急げ。
ガ どれ、刺がささったの?
アリョナーを、何で外に出さないんです。
ダ 長旅で疲れたせいか、
身体の調子が良くなくて、医者に見てもらったの。
ガ そしたら何て?
ダ いえ、処方箋を書いてくれたわ。
知らない人ばかりで
気に病むのか
外に出ようとしないの。
あなた、ちょっと言ってくれない?
ガ はは、そうさなあ。
俺の言うことなんか聞くかな。
ラジカセ(父) 綿入り服を持っていった方がいいぞ。
ハンハのあたりは寒いからな。
秋は雪が早く降るしな。
二人が出発したらセルチマーおばさんに
連絡するよ。
(ダ) そうして。
さあ、服を着なさい。
どれ。
(父) 着せてやるよ。
もうちょっと身体を起こして。
9月に休暇が取れたら
父さんも行くよ。
(アリョナー) きっと来てね。お父さん。
(父) 行くよ。
(ダ) 穀物の収穫の時期なのに、
あんたに休暇が取れるもんですか。
私たちなら心配は要らないわ。
知らない土地に行くわけでもなし。
(父) お前の上司によく話しておくよ。
行くからには故郷で
ひと夏過ごして来た方がいいからな。
ガ アリョナー、外に出たらどうだい。
景色でも見なよ。
こんなにいい天気なのに
一日中ベッドにいるなんて。
近いうちここでもテレビが見られるようになるかも。
ダ ほう。
ガ テレビが見られたらすごいぞ。
まるで映画さ。
県都の親戚のところで見せてもらった。
相撲の試合をな。
ダ ふふ。
ガ 近いうちこの辺りに大きな鉱山の町が出来る。
鉱山に入って
ダンプカーの運転手になろうと思っているんだ。
すごいぞ、ダンプカーは。
ヤクの種オスってところさ。ははは。
ガ ここには、見るものがいっぱいさ。
毎晩映画をやるし
実習の学生たちが来たから
パーティーもすごく盛り上がる。
ア どんな楽器があるの?
ガ え。
ア 楽器はどんなの?
ガ ははあ、いろいろさ。
前はエレキ・ギターが2本あったけど、
この冬ある男が調弦するって言って
弦をみんな切っちゃった。
それからアコーデオンだけが楽器さ。
学生たちがラジカセを持って来たらしいが、
パーティーすると言っても貸してくれない。
ア 何て人たちでしょう。
ガ そうさ、ここには変わった奴がいっぱいさ。
おととし、この町に食堂の装飾に
デザイナーが来たんだ。
そいつのズボンには
真鍮のボタンがいっぱいついていた。
シャツには
見たこともない文字が並んでいる。
そしたら、女たちがそいつに夢中になり
俺たち土地の若者を無視し出した。
ある日そのデザイナーが
風呂に入っている間に
服を残らず隠してやったんだ。
ア そしたら。
ガ いや、そしたら、いや、
窃盗の疑いで、もう少しで
刑務所に入るところさ。
こんな具合さ。
ア あなた本当に変わってるわ。
ガ あいつ、真鍮のボタンで、持てたんだ。
すっ裸になって並んだら
みんな同じさ。
それで、ここの娘のひとりが
妊娠して残された。
おや、お前の母さん、どこ行った?
ア 湧き水に行ったらしいわ。
入れ物持って出ていったから。
ガ 湧き水って?
ア ムストのよ。
私に毎日飲ませてくれるの。
ガ ムスト?
そんなに遠くにか?
それで歩いていったのか、ええ?
ア 知らないわ。
ガ おや、俺になぜ言わないんだ。
そうか、それじゃ追いかけよう。
ガ おばさん、どうしたんだ?
ダ あの子に効くはずなのよ。
いい湧き水だって言うから。
治るんじゃないかと思って。
ガ アリョナーは何歳だ?
ダ 19よ。
ガ はあ、へへ。
うちの妹よりひとつ下だな。
ダ 女の子はむずかしいわ。
医者はよく療養しなさい、治るからって言うけど。
でも、どうだか。 もう3年も経つもの。
あんたそんな大きな入れ物どうするの?
ガ ああ、湧き水を一度に運んだら
おばさんたち楽だろうと思って。
ダ はは。そうはそうなんだけどね。
近くにあるんだから毎日新鮮なのを
飲ませようと思って。
毎朝汲みに来って、たいしたことないから。
ガ いや、せっかく来たんだから
少しだけでも入れていこうよ。
ダ いいわよ、そんな。疲れるだけよ。