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【0:00】 かくてその後八郎は、本丸さして上がりける。はや本末になりければ、君の御前にてをつかえ、一礼述べていたりし、御大将は御覧じて、「おお、八郎よ。この度の戦は、敵が勝ちでも候か、味方が勝ちでも候か? つつまず語り聞かせよ」と、問われて八郎、涙をはらり、「申し上げます、わが君様。この度の戦というのは、戦起こりて二十日なり。せめての戦いナンカであれば、味方は討ち残されしはわれ一人。この上からは、裏切りされて一大事。御大将もお御台様も、私欲を捨てて落ちたまい、旅の御供、この八郎がつかまらん。はや落ち給え。ご用意あれ」ツネモト卿は聞こしめされ、「何を言うぞや八郎よ。いかなることがあればとて、この住み慣れし、高倉ゴショウを振り捨てて。いずくの里へか落ち行かん。落ちようと誘うは、うらめしや」「ごもっともでございます。ご道理なれど、その後は、世をひらかせ奉らん。早落ち給え。ご用意あれ」御大将は聞し召され、「その気にあらば八郎よ。昔の人の例えにも、風にしなわぬ草木が、仇折れするとの例えもある。これまでは、なんじが勧めに、まかすぞ」と、親子三人、一間どころにひきこもり、心にはそまねども、旅の装束なさりける。綾の脚絆に、綿の足袋、イトのワランズを締めて、都傘にはカオウカンふし。ご用意あれば、黒田の八郎が御供で、裏門さしてぞ、落ちたもう。暗さは暗し、真の闇。寒さは寒し、雪は降る。落ち行き給うぞ哀れなり。
【5:49】 話はかわりて、コマツバラに、陣を引いたる、エガラシの兵衛ムネツグは、ザイハイ振って駒乗り回す。「やあ! もろども。もう一度、高倉ゴショウに押し寄せ行け」「はっと」と、答えて大勢は、高倉ゴショウに押し寄せて、トキの声を上ぐれども、高倉ゴショウに、なんの答えがなきゆえに、短慮のエガラシ、「やあ! 黒田の八郎ミチヤスは、このエガラシが攻め来るに、怖気づくらい、いずくを指して落ちたるか。なれどもまあ、家探しせん」と、表の門を、無味無産には打ち破り、はや城内に乗り込んで、そこをやんかしこと、探せどうも、落ち行けた給う、ツネモト主従の行方知れねば、裏手の門に回ってみれば、雪の中には、今、いま踏んだる、四人の足型。ここぞと、裏手をさしてぞ、追っかけ行く。 落ち行けたもうツネモト主従は、大雪ふりのことなれば、急ぎ給えど、道はかどらず。はや道の一里八丁ばかりも、落ちさせたもうそのところへ、追っかけ来る下野勢。「やあ、やあ! そこを落ち行き給うは、高倉ゴショウのツネモト主従みてはましまさんか。落ち人、余すな逃すな」と、声、大音に呼ばわれ。 取って返し八郎は、小高き所に馳せ上がり、「やあ、やあ! 下野勢。先の手並みに凝りもせず、また寄せ来るかこざかしや。この上からは八郎が、腕の力の続くまで、刀の根首の折れるまで、今日こそ一騎も返さんぞ」と、声大音に呼ばわれ、しばらく間の戦いに、下野勢、トミオカ因幡守が大将で、二手に分かれ、ツネモト親子三人を、七重や八重に取りまけば、「南無三宝」と、ツネモト卿も、ホウキがやおずはと、四五六人な切って倒してみたまえど、なおも大勢落ち重なり、とおとのことに、ツネモト夫婦に綱をうち、タマヨの姫にも綱をうち、小高き所に引き据えて、「やあ、やあ! 下野勢。目指す仇の、タマヨの姫を生け捕ったならば、八郎には身は隠るなと」後ふと、振り返り八郎は、無念の涙を、ハラハラと、「我一人働いたとて、なんの役にもたち申さん。はや我にも綱をうち、君と同じところに引かれよ」と、ゆんでもめても、後ろに回せど、八郎ほどしの強者なれば、恐れて近寄る人がない。トミオカ因幡守はエズエズと側へ寄り、シスジの縄をかけたるを、瞬きならぬ早業なれ。
【11:53】 エガラシの兵衛ムネツグは、まことに一城一局を、攻め落としたる勢いで、下野城と引いて行く、あいの道中預かりおいて、サワヤマ城にとなりければ、黒田の八郎ミチヤスは、人に優れし強者なれば、常の道では適うまいと、要害深き下野の、岩切り抜いだ、岩の牢屋に打ち込んで、大手より石の扉を立て切って、二重の錠をおろしたときは、おにもあざもこ、八郎も、無念で月日をおくりける。 ある日のことにエガラシは、タマヨの姫を牢の中より引きい出し、白州の方に引き据えて、その身は衣服改めていでむかえ、「のう、タマヨ殿。尋常に諦めて、身が女房に従い給い、さすればそなたの父母は三ヵ国の主の隠居。八郎ともがみがきらい。そなたとソレガシは枕を交わすかねごとや。蝶よ花よの楽しみぞ、あまり憎うはあるまいぞ」と、しなたれかかれば、姫君は、「自らを、女と思うて、侮るか。女なれども自らは、右大臣ツネモトが娘ぞや。自らゆえには父上様や母上様、それのみならぬ、八郎まで牢屋の住まいをなさるぞや。例えこの身は、エチゴダメシやニブダメシ。身は寸々に刻まれて、なぶり殺しにほうとても、人面獣心のエガラシに、なんと一夜がそわれるものか。殺さば殺せ、討たば討て、父母の鬱憤を払さでおこうか」と、あても気高きマナジリで、はったとにらんだその時は、身の毛もよだつばかりなり。 短慮なエガラシ、「やあ! 三ヶ国の主とも言われしソレガシを、人面獣心とは何事ぞ。もうこうなるからは、可愛さ余って憎さが百倍。牢でわが身に従わんについては、いかしておくことは叶わぬ。引き裂き捨てん」と、立ち上がれば、家来トミオカ押しとどめ「まあ、お旦那様。お腹立ちはごもっとも、通りさりながら、かの姫は都、高倉の右大臣ツネモト卿の御娘。何卒ご了見なされてくださりませ」「うーん。その気にあらば因幡守。今この場では殺さねど、生かしておくことはあい叶わぬ。かねて用意の、虚ろの船に作りこみ、ナスンが浦の荒波に、沈みにかけてかえられよ」「はっ」と、答えて家来ども、姫君様を受け取りて、虚ろの船ともうするは、一寸二分のムコの板、長さ一丈二尺に切り組ませ、姫君様を船の中には作りこみ、銅ぬべては目板に打たせ八方よりもカンを打ち、沈めの石を絡めつけ、車に乗せてそれよりも、サワヤマ城をひったてて、ナスノが浦にと引いて行く。
【19:49】 ナスノが浦になりければ、どこへ沈めようか、ここへ沈めようかと、点々の表情なり。下人の中にも、慈悲ある人が立ちいでて、「やあ、方々。かの姫は都高倉右大臣、ツネモト卿の御娘。我々にはとがむむこいもない。これ沈めにかけて殺したとて、我々なんの役にも立ち申さん。助けてはいかがでござろうか」「あいや、いかにも貴殿の言われる通り。助けてもよろしいが、その助ける工夫はどうして」「助ける工夫は他にはない。沈めの石を切り離し。はや沖中に突きながす。なれば一度はどこの島にか上がらせ給うとおぼえたり。我が君には、ナスノが浦の荒波に、沈めにかけて帰りましたと、申しあぐれば、なんの仔細があろうものか。人、一人助くれば、日に千体の仏を刻んだよりもなお供養と聞く」「げにもそうじゃ」と、家来ども、沈めの石を切り離し、お助け申す姫君様と、はや沖中に突き流し、数多の者は我が家、我が家と立ち返る。 後に哀れは姫君様。そこの島では押し流され、かしこの島ではより流され。もまれ流れて流れゆく。中に哀れは姫君様。雪のようなる手を合わせ。「南無や申さん。清水観世音様。例えこの身はどうなろうとも、牢屋住まいの父上様や母上様。それのみならず八郎を、もう一度牢より出してたべ給え」文言を唱えながら、口に念仏、目に涙。揺られもまれて流れゆく。かの姫君の身の上は、哀れ千番、なかなかに観世の人こそなかりける。いかがなるべけ次第なり。
【0:00】
かくてその後八郎は、本丸さして上がりける。はや本末になりければ、君の御前にてをつかえ、一礼述べていたりし、御大将は御覧じて、
「おお、八郎よ。この度の戦は、敵が勝ちでも候か、味方が勝ちでも候か? つつまず語り聞かせよ」
と、問われて八郎、涙をはらり、
「申し上げます、わが君様。この度の戦というのは、戦起こりて二十日なり。せめての戦いナンカであれば、味方は討ち残されしはわれ一人。この上からは、裏切りされて一大事。御大将もお御台様も、私欲を捨てて落ちたまい、旅の御供、この八郎がつかまらん。はや落ち給え。ご用意あれ」
ツネモト卿は聞こしめされ、
「何を言うぞや八郎よ。いかなることがあればとて、この住み慣れし、高倉ゴショウを振り捨てて。いずくの里へか落ち行かん。落ちようと誘うは、うらめしや」
「ごもっともでございます。ご道理なれど、その後は、世をひらかせ奉らん。早落ち給え。ご用意あれ」
御大将は聞し召され、
「その気にあらば八郎よ。昔の人の例えにも、風にしなわぬ草木が、仇折れするとの例えもある。これまでは、なんじが勧めに、まかすぞ」
と、親子三人、一間どころにひきこもり、心にはそまねども、旅の装束なさりける。綾の脚絆に、綿の足袋、イトのワランズを締めて、都傘にはカオウカンふし。ご用意あれば、黒田の八郎が御供で、裏門さしてぞ、落ちたもう。暗さは暗し、真の闇。寒さは寒し、雪は降る。落ち行き給うぞ哀れなり。
【5:49】
話はかわりて、コマツバラに、陣を引いたる、エガラシの兵衛ムネツグは、ザイハイ振って駒乗り回す。
「やあ! もろども。もう一度、高倉ゴショウに押し寄せ行け」
「はっと」と、答えて大勢は、高倉ゴショウに押し寄せて、トキの声を上ぐれども、高倉ゴショウに、なんの答えがなきゆえに、短慮のエガラシ、
「やあ! 黒田の八郎ミチヤスは、このエガラシが攻め来るに、怖気づくらい、いずくを指して落ちたるか。なれどもまあ、家探しせん」
と、表の門を、無味無産には打ち破り、はや城内に乗り込んで、そこをやんかしこと、探せどうも、落ち行けた給う、ツネモト主従の行方知れねば、裏手の門に回ってみれば、雪の中には、今、いま踏んだる、四人の足型。ここぞと、裏手をさしてぞ、追っかけ行く。
落ち行けたもうツネモト主従は、大雪ふりのことなれば、急ぎ給えど、道はかどらず。はや道の一里八丁ばかりも、落ちさせたもうそのところへ、追っかけ来る下野勢。
「やあ、やあ! そこを落ち行き給うは、高倉ゴショウのツネモト主従みてはましまさんか。落ち人、余すな逃すな」
と、声、大音に呼ばわれ。
取って返し八郎は、小高き所に馳せ上がり、
「やあ、やあ! 下野勢。先の手並みに凝りもせず、また寄せ来るかこざかしや。この上からは八郎が、腕の力の続くまで、刀の根首の折れるまで、今日こそ一騎も返さんぞ」
と、声大音に呼ばわれ、しばらく間の戦いに、下野勢、トミオカ因幡守が大将で、二手に分かれ、ツネモト親子三人を、七重や八重に取りまけば、「南無三宝」と、ツネモト卿も、ホウキがやおずはと、四五六人な切って倒してみたまえど、なおも大勢落ち重なり、とおとのことに、ツネモト夫婦に綱をうち、タマヨの姫にも綱をうち、小高き所に引き据えて、
「やあ、やあ! 下野勢。目指す仇の、タマヨの姫を生け捕ったならば、八郎には身は隠るなと」
後ふと、振り返り八郎は、無念の涙を、ハラハラと、
「我一人働いたとて、なんの役にもたち申さん。はや我にも綱をうち、君と同じところに引かれよ」
と、ゆんでもめても、後ろに回せど、八郎ほどしの強者なれば、恐れて近寄る人がない。トミオカ因幡守はエズエズと側へ寄り、シスジの縄をかけたるを、瞬きならぬ早業なれ。
【11:53】
エガラシの兵衛ムネツグは、まことに一城一局を、攻め落としたる勢いで、下野城と引いて行く、あいの道中預かりおいて、サワヤマ城にとなりければ、黒田の八郎ミチヤスは、人に優れし強者なれば、常の道では適うまいと、要害深き下野の、岩切り抜いだ、岩の牢屋に打ち込んで、大手より石の扉を立て切って、二重の錠をおろしたときは、おにもあざもこ、八郎も、無念で月日をおくりける。
ある日のことにエガラシは、タマヨの姫を牢の中より引きい出し、白州の方に引き据えて、その身は衣服改めていでむかえ、
「のう、タマヨ殿。尋常に諦めて、身が女房に従い給い、さすればそなたの父母は三ヵ国の主の隠居。八郎ともがみがきらい。そなたとソレガシは枕を交わすかねごとや。蝶よ花よの楽しみぞ、あまり憎うはあるまいぞ」
と、しなたれかかれば、姫君は、
「自らを、女と思うて、侮るか。女なれども自らは、右大臣ツネモトが娘ぞや。自らゆえには父上様や母上様、それのみならぬ、八郎まで牢屋の住まいをなさるぞや。例えこの身は、エチゴダメシやニブダメシ。身は寸々に刻まれて、なぶり殺しにほうとても、人面獣心のエガラシに、なんと一夜がそわれるものか。殺さば殺せ、討たば討て、父母の鬱憤を払さでおこうか」
と、あても気高きマナジリで、はったとにらんだその時は、身の毛もよだつばかりなり。
短慮なエガラシ、
「やあ! 三ヶ国の主とも言われしソレガシを、人面獣心とは何事ぞ。もうこうなるからは、可愛さ余って憎さが百倍。牢でわが身に従わんについては、いかしておくことは叶わぬ。引き裂き捨てん」
と、立ち上がれば、家来トミオカ押しとどめ
「まあ、お旦那様。お腹立ちはごもっとも、通りさりながら、かの姫は都、高倉の右大臣ツネモト卿の御娘。何卒ご了見なされてくださりませ」
「うーん。その気にあらば因幡守。今この場では殺さねど、生かしておくことはあい叶わぬ。かねて用意の、虚ろの船に作りこみ、ナスンが浦の荒波に、沈みにかけてかえられよ」
「はっ」と、答えて家来ども、姫君様を受け取りて、虚ろの船ともうするは、一寸二分のムコの板、長さ一丈二尺に切り組ませ、姫君様を船の中には作りこみ、銅ぬべては目板に打たせ八方よりもカンを打ち、沈めの石を絡めつけ、車に乗せてそれよりも、サワヤマ城をひったてて、ナスノが浦にと引いて行く。
【19:49】
ナスノが浦になりければ、どこへ沈めようか、ここへ沈めようかと、点々の表情なり。下人の中にも、慈悲ある人が立ちいでて、
「やあ、方々。かの姫は都高倉右大臣、ツネモト卿の御娘。我々にはとがむむこいもない。これ沈めにかけて殺したとて、我々なんの役にも立ち申さん。助けてはいかがでござろうか」
「あいや、いかにも貴殿の言われる通り。助けてもよろしいが、その助ける工夫はどうして」
「助ける工夫は他にはない。沈めの石を切り離し。はや沖中に突きながす。なれば一度はどこの島にか上がらせ給うとおぼえたり。我が君には、ナスノが浦の荒波に、沈めにかけて帰りましたと、申しあぐれば、なんの仔細があろうものか。人、一人助くれば、日に千体の仏を刻んだよりもなお供養と聞く」
「げにもそうじゃ」と、家来ども、沈めの石を切り離し、お助け申す姫君様と、はや沖中に突き流し、数多の者は我が家、我が家と立ち返る。
後に哀れは姫君様。そこの島では押し流され、かしこの島ではより流され。もまれ流れて流れゆく。中に哀れは姫君様。雪のようなる手を合わせ。
「南無や申さん。清水観世音様。例えこの身はどうなろうとも、牢屋住まいの父上様や母上様。それのみならず八郎を、もう一度牢より出してたべ給え」
文言を唱えながら、口に念仏、目に涙。揺られもまれて流れゆく。かの姫君の身の上は、哀れ千番、なかなかに観世の人こそなかりける。いかがなるべけ次第なり。