再び物憂げな米業界。大正１０年７月１７日の新聞からご紹介。
週初は定期物は31円49銭の新高値に躍進して、製糸業の好況同様になお上値を残している様子があった。しかし正米はその後一服の状況で、もって定期物を刺激するほどの気勢を示さない。従って定期物は価格が反落し、やや伸び悩んでいる傾向を示したのである。期正米の価格がこののち上へ上へと進むか、また期待上昇がこれで陰りを見せて、価格が一下げするかは、月末の売買状態によってきまるものだから、一般大衆は依然として気迷いの状態が続く。台風シーズンは徐々に接近して来る。20日は土用の入りである。土用期の日照時間が十分にあるかないかを懸念して米業界はまたしても物憂げな姿をみせている。
当然戦後恐慌のあおりは米をはじめとする農産業にもおよんでいます。農作物の価格の下落はこれ以後進んでいくのですが、この時期の上昇もまた今後長らく続く下落の合間の一筋のはかない「輝き」ともいえます。この動画を見ている我々は、この後世界恐慌につながるという歴史を知っていますが、当然当時の新聞の論者、加えて大衆はそれを知る由もありません。この時期の若干の景気の回復感が、今後の将来に対する国民の希望になっていたのではないかと想像するに余りあります。その期待は関東大震災後の震災恐慌、さらに続く1929年の世界恐慌で完全に打ち壊されてしまうのでありますが。 #米 #令和の米騒動